ジョンソン英首相は、ウクライナを訪問し支援を主導してきた(提供:Ukrainian Presidential Press Office/AP/アフロ)
ジョンソン英首相は、ウクライナを訪問し支援を主導してきた(提供:Ukrainian Presidential Press Office/AP/アフロ)

 欧州では主要国の首脳辞任や政局混迷が顕在化し、ウクライナ支援に黄信号がともり始めている。

 英国では7月7日、主要7カ国(G7)でのウクライナ支援を主導していたジョンソン首相が辞任に追い込まれた。2019年12月の総選挙での圧勝から3年もたたないうちに、「パーティーゲート」の発覚や、度々不祥事を起こしたピンチャー議員をその事実を知りながら院内副幹事長に任命した責任などで、世論はおろか与党議員の支持も失った。

 ジョンソン首相の支持率は、総選挙での大勝当初がピークで6割を超えていたが、新型コロナウイルス危機対応での不手際も重なり、22年1月中旬には支持率は2割近くまで低下していた。ジョンソン首相の2度目のキーウ訪問もスキャンダルをごまかすためと批判の対象となっており、その直後の辞任劇であった。

 またイタリアでも再び政局の混迷が深まる兆しが懸念されている。7月14日、独仏以上にウクライナ支援に積極的であったドラギ首相が、政権を支えてきた挙国一致体制はもはや存在しないと発言し、マッタレッラ大統領に辞表を提出した。ただマッタレッラ大統領は辞表を受理せず、議会に再度働きかけるようドラギ首相に促した。

 ドラギ首相は、コロナ危機からの復興や、政局不安を回避するために挙国一致内閣を率いるようマッタレッラ大統領によって2021年2月に任命された経緯がある。大統領が非政治家の実務者を首相に任命する、いわゆるテクノクラート政権である。しかし、7月13日に政府が提出した260億ユーロ(約3兆6000億円)に及ぶ家計や企業向けの経済支援策に対し、連立政権の一角を担う五つ星運動を率いるコンテ前首相が、政府の対応は十分ではないとして不支持を表明した。14日の上院での議会採決で同支援策は可決されたが、ドラギ首相はこれまで再三にわたり、連立パートナーの支持がなければ政権は継続できないと警鐘を鳴らしてきた。

 ドラギ首相が辞任を表明して以降、市長に加え、業界団体、医療従事者や庶民ら1800人以上が留任を懇願した。そのためドラギ首相は7月20日にいったん議会に戻り、連立パートナーが改革アジェンダを支持する限り、退陣しないとの意思を示した。その後行われた内閣の信任決議は賛成多数で可決されたものの、連立与党のうち右派の同盟およびフォルツァ・イタリア、左派の五つ星運動などの主要政党は投票をボイコットし、事実上の不信任を表明した。

 これを受けてドラギ首相は万事休すとなり、21日に正式に辞任した。政権の不安定さから、総選挙は23年6月1日の任期満了を待たず23年初頭には実施されるとみられていたが、ドラギ首相退陣によりマッタレッラ大統領は上下院の議会解散を表明し、22年9月25日に前倒しで総選挙を実施すると決定した。11年から19年まで欧州中央銀行(ECB)総裁を務めたドラギ首相の手腕は、EU復興基金からの次期トランシェの資金受領のために大いに期待されていたが、たった18カ月で首相の座を降りることとなった。復興のための改革はご破算となり、それどころか23年予算案を期限までに通過させることができるかすら危うくなる事態に陥っている。

 五つ星運動ではウクライナ支援を巡って内紛が生じている。ウクライナ支援に消極的な五つ星運動のリーダーであるコンテ前首相に抗議して、党の有力者であるディマイオ外相が離党する騒ぎが起きている。さらに、今回の前倒し選挙では、ドラギ首相の留任を願っていた有権者の怒りが政権崩壊を招いた連立与党にぶつけられる可能性が高い。特に右派の同盟およびフォルツァ・イタリアは早期選挙が有利と踏んでいたからこそ連立政権支持を撤回したわけで、策士策に溺れることになるとの意見もある。

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