西側諸国は、ルーブルでのロシア国債の元利払いを認めていない(写真:ロイター/アフロ)
西側諸国は、ルーブルでのロシア国債の元利払いを認めていない(写真:ロイター/アフロ)

 「結局、ロシア国債はデフォルトしたのですか?」

 世界の大手金融機関でつくるクレジットデリバティブ決定委員会(CDDC)は6月1日、ドル建てのロシア国債が「支払い不履行(failure to pay)」に当たると認定した。この発表に、多くの市場関係者が戸惑い、ロンドンの筆者のもとにも多くの質問が寄せられた。

 デフォルトか否かの、困惑のもととなっているのは、4月4日に元利払いの期限を迎えた2本のロシア国債である。同国債を巡る報道をつぶさに追う忍耐力のある人ならば(複雑すぎて追及する気が失せた人は多いだろう)、「この国債についてはロシア政府が最終的にドルで元利金を支払ったはずなのに、なぜいまさらデフォルト認定なのか……?そもそもの元利払いもロシア中銀の資産が凍結されている状況で、どうやってドルで支払ったのだろうか……?」という疑問をまず抱くだろう。

 実は、同委員会が認定したのは、(既に解決済みである)同ロシア国債の本来の元利金に関する支払いではなく、支払期日を過ぎデフォルト(債務不履行)が確定されるまでの“猶予期間中”に生じた利息約190万ドルに対する「支払い不履行」である。つまり、ロシア国債自体は「デフォルト」していない。

 

 ここまででも、多くの読者は追及する気が失せたかもしれない。そこで時系列を整理して、デフォルト“もどき”となった経緯を確認してみよう。

 発端は、4月4日を期限とするドル建てロシア国債2本の元利払いが“ドル”ではなく“ルーブル”で支払われ、しかも(非友好国の)海外投資家の手元には届かず、ロシア連邦証券保管振替機関(NSD、日本では証券保管振替機構に当たる)で留まったまま、支払期限を過ぎたことである。国際スワップ・デリバティブ協会(ISDA)や西側の格付け機関はこのロシア国債の契約には、ルーブルでの返済規定がなかったため、猶予期間30日が過ぎる5月4日に、正真正銘のデフォルトを認定する準備をしていた。一部の格付け機関は、事前に外貨建てロシア国債の信用格付けを「選択的デフォルト(SD)」に引き下げ、CDDCも4月20日、ルーブルでの返済は潜在的デフォルトに当たると認定した。ただ猶予期間中のため、デフォルトが確定したわけではなかった。

 そもそも、5月4日までにロシアが(非友好国の)海外投資家にドルで元利払いをする可能性は低いとみられ、ロシアには1918年以来となる対外債務のデフォルトが迫りつつあった。ただしロシア政府が一方的にドルではなくルーブルで返済しようとしたのには、ロシア中銀の外貨準備が凍結された以外にも理由がある。

次ページ 米国での特例失効が引き金に