英ロンドンの金融街では、金融機関の従業員が徐々に出社を増やしつつある(写真:ロイター/アフロ)
英ロンドンの金融街では、金融機関の従業員が徐々に出社を増やしつつある(写真:ロイター/アフロ)

 英国は新型コロナウイルスの感染拡大予防において後手に回り、検査・追跡態勢も感染拡大防止に大きな効果をもたらすことはできず、死亡率は高まり、経済への打撃を抑制することもできなかった。しかし、ワクチン接種プログラムは驚くほど順調に進んでおり、国内ではコロナ危機収束に向けた期待が高まっている。2021年4月末時点で新型コロナウイルスの感染者数や入院患者数、死亡者数は第2波が始まる前の2020年9月の水準にまで減少している。

 このため、英国政府が2021年2月に発表したロックダウンの解除に向けたロードマップに従い、当初の予定通り3月8日、3月29日、4月12日と段階的に制限措置が解除されている。昨年のクリスマスから年初にかけては、感染者数が急増し医療体制を圧迫し、沈鬱なムードが漂っていたが、その後の措置緩和により、国内の雰囲気は楽観的になっていった。

 ただ、国内で製造されている英アストラゼネカのワクチンによる(ワクチン接種の有無による発症率の比率である)予防効果は67%と、米ファイザー(同95%)や米モデルナ(同94%)に見劣りする。南アフリカやインドで最初に検出された変異株に対し、ワクチンの予防効果が低いとの懸念がある。またアストラゼネカのワクチン接種後の副作用として、危険かつまれな脳静脈血栓症(CVT)が報告されたことにより、欧州を中心にアストラゼネカワクチンの使用停止や接種年齢の制限が導入された。

 このため、英国でも一時は接種プログラムの進捗が危ぶまれた(ただしオックスフォード大の調査によれば、CVTの発症はファイザー、モデルナのワクチン接種を受けた100万人あたり4人に対して、アストラゼネカでは100万人あたり5人にとどまっており、リスクはほぼ変わらない)。アストラゼネカのワクチンは英国変異株には高い予防効果が確認されているが、南アフリカ変異株に対する予防効果は10.4%、ブラジル変異株に対する予防効果はそれ以下とされている。

2回目のワクチン接種後に3回目の接種も

 一方、ファイザーのワクチンについては、予防効果が接種6カ月後には95%から91%に落ちていることが、(ファイザーと共同開発している独ビオンテック内の)研究データから示されているため、2回目のワクチン接種後9~12カ月に3回目の接種が必要になる可能性があるという。さらに、新型コロナウイルスと共存するためには12~18カ月ごとにブースター(変異株を含む追加免疫)のワクチン接種が望ましい状況になる可能性もある。

 英国政府はファイザーのワクチンを追加で6000万回分確保している。これにより、英国が調達したファイザーのワクチンは1億回分と、アストラゼネカのワクチンと同量になり、(モデルナのワクチン2000万回分を合わせれば)理論上は3回目の接種も前2回と同じワクチンを利用することが可能となっている。

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