大詰めを迎えるフランス大統領選挙。現職のマクロン氏が集会を開いた(写真:AP/アフロ)
大詰めを迎えるフランス大統領選挙。現職のマクロン氏が集会を開いた(写真:AP/アフロ)

 ロシアのウクライナ侵攻から1カ月が経過した。西側諸国の対ロシア経済制裁はさらに強化されているため、さぞ生活が困窮しているだろうと、旧知のロシア人に連絡をとり、モスクワでの現状を聞いてみた。制裁発動直後はスーパーで買い占めが起きたそうだが、現在は全く普通の状況に戻っているとのことだ。

 ただ(報道にも出ていたが)砂糖と小麦粉が不足しているとのことである。しかしスーパーの陳列棚が空ということではなく、ブランドにこだわらなければ手に入るそうだ。そういえば英国も2020年春に新型コロナウイルスの感染拡大により、最初のロックダウン(都市封鎖)が起きた際に、消毒液やせっけんなどの買い占めのほかに、砂糖と小麦粉が品薄となったことを思い出した(パニック時の人間心理なのかもしれない)。

 また米ドルを引き出すためにATMに長蛇の列ができていたが、これも解消し、金融システムも通常通りに戻っているとのことだ。ロシア国債のデフォルト騒動で急落したルーブルも、既に侵攻前の水準まで戻っている(1ドル140ルーブル台まで下落したものの、現在は80ルーブル台と70%以上の上昇)。欧州で最も優秀な中銀総裁として名高い、ナビウリナ・ロシア中銀総裁の迅速かつ的確な金融政策が功を奏したようだ。

 原油価格の高止まりに加え、貿易制裁により外貨の使い道がなくなったロシアは今後もさらなるルーブル高が予想される。1ドル125円台まで急落した円と比べると、ロシアと日本とどちらが制裁対象国か分からなくなる。

 一方で、ロシアへの制裁の副作用が徐々に英国でも出始めている。一番、大きな影響はやはりエネルギー料金の高さであろう。筆者の近所のガソリンスタンドでもレギュラーガソリンが1リットル当たり約280円(1.65ポンド)にまで高騰している。

 また、ガス供給に及ぼす影響への懸念から、卸売りガス価格は3月4日に過去最高を更新した。英国家庭の主要暖房源はガスで、その卸売価格は1年間で5倍になっている。21年からのガス・電気の卸売価格の高騰を受け、英国のガス・電力市場監督局(ofgem)は既に年間エネルギー料金の上限を22年4月より54%引き上げ、1971ポンドにすることを決定している。しかも、ウクライナ侵攻によって、来冬のエネルギー価格上昇も予想されている。10月の上限改定では再び50%近くの引き上げとなり、平均的な世帯のエネルギー料金は年間3000ポンド(約46万円)にも達するとの見方もある。

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