ロシアでは経済制裁でルーブルが急落し、ATMに外貨を求める市民が殺到した(写真:写真:ZUMA Press/アフロ)
ロシアでは経済制裁でルーブルが急落し、ATMに外貨を求める市民が殺到した(写真:写真:ZUMA Press/アフロ)

 ロシアのウクライナ侵攻以降、西側諸国の厳しい経済制裁により、ロシア債券の多くが取引不能の状態に陥っている。ロシアは3月1日より、融資契約に関連した海外投資家に対するハードカレンシー(流動性が高い国際通貨)での支払いや国内からの海外送金を禁止した。

 そのため3月2日に112億ルーブルの国債利払いを行い、ロシアの証券保管振替機関には金額が振り込まれたが、(この海外送金を禁じる大統領令を理由に)海外の債券保有者の手元には支払いが届いていない。このため投資家はロシアがデフォルト(債務不履行)する可能性があると考えるようになり、ロシア国債の価格は急落している。

 ロシア国債がデフォルトに陥ったかどうかは、格付け会社による認定が一般的である。つまりデフォルト状態を示す格付けを付与するかどうかである。ただし、格付け会社によって認定基準は異なる。

 米ムーディーズ・インベスターズ・サービスは3月6日にロシアの自国通貨・外貨建て長期国債の格付けを、デフォルト状態を示すCより1ノッチ上のCaまで格下げしているうえ、見通しをネガティブとしている。まずは次回の支払期限である3月16日に予定されているドル建てロシア国債の約1億1700万ドルの利払いに多くの格付け会社が注目していた。

 ただし、利息不払いが即、信用イベントあるいはデフォルトにつながるわけではない。3月16日の利払いが行われなかった場合でも、30日の猶予期間があるため、4月15日まではデフォルト認定されない可能性がある。

 また3月16日以降も支払期限が相次いでおり、3月31日に約3億5900万ドルの元本返済、4月2日に約20億ドルの満期償還などが待ち構えている。むろん、多くの格付け会社が、デフォルトが目前に迫ったとの見方を示し、債券額面の3~6割程度しか回収できないなど、警告を発しているのが実情である。

 なお、3月5日の大統領令では制裁措置を発動した「非友好国」の債権者に対し、ロシア連邦中央銀行(以下、ロシア中銀)の定めた為替レートにより、ルーブルで返済すれば、債務履行とみなすとしており、デフォルトを回避する目的と考えられている。ただ、海外投資家はこれを受け入れない可能性が高く、デフォルト入りを巡りロシア国内外で認識が分かれるようなことになりかねない。現時点での格付け会社の判断では、(支払い能力があるにもかかわらず一部の債務を支払わない)選択的債務不履行(セレクティブ・デフォルト)に認定される可能性が高いとも指摘されている。

 またロシア債券は第三者法域による紛争調停を承認しないため、海外投資家が法廷闘争に持ち込むことも難しい。そのため、市場は当面の間は債務再編が行われないという見通しを織り込みつつある。ただし長期的な訴訟になるが、ロシア国外で凍結された資産を債務返済に利用することは不可能ではないという。

 むろん、ハゲタカファンドなど投機筋はこれを期待してジャンク債として買いあさるかもしれない。ただ現時点では、世界の2大証券決済機関であるベルギーのユーロクリアとドイツ取引所傘下のクリアストリームは決済通貨としてのルーブル受け入れ停止を決定したままである。そのため事実上、ルーブル建て債券を保有する外国人投資家のポジション解消方法はほぼ消滅し、塩漬けを余儀なくされている状況である。

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