ロシアのプーチン大統領は、ロシア正教会のクリスマス礼拝に1人で参加した(写真:SPUTNIK via ロイター)
ロシアのプーチン大統領は、ロシア正教会のクリスマス礼拝に1人で参加した(写真:SPUTNIK via ロイター)

 英国に住む筆者は、クリスマスイブ(12月24日)の夜には、英国国教会でのクリスマス礼拝に参加するのが恒例となっている。大聖堂の聖歌隊に所属する娘の送迎や教会でのボランティアも担当しているため、昨年もイエス降誕を祝う深夜12時を大聖堂で無事迎えられた。ちなみに日本でも有名なクリスマスソング、Silent Night(きよしこの夜)はキリスト教のHymn(賛美歌)であり、聖歌隊による生の合唱で聞くことはお勧めである。

 一方、ユリウス暦で動くロシア正教会のクリスマスは年明けの1月7日である。クリスマスイブとなる1月6日には、英国国教会をはじめとするキリスト教宗派と同様に真夜中に礼拝があり、例年ロシア国営テレビはプーチン大統領が出席する様子を放映する。

 通常はモスクワ郊外の地元の教会において、複数人で礼拝に参加するプーチン大統領だが、今年はモスクワ市内の大聖堂で、たった1人で参加するという異例の事態となった。ちなみにロシア正教会は英国国教会と違い、椅子がないため礼拝中は終始立ちっぱなしである。(ロシア正教会での)結婚式も同様で、参加者全員立ったままで行うのはそのためである。

 現時点では、ロシアとウクライナが停戦交渉の席に着く可能性は低く、侵攻の長期化は避けがたい。プーチン大統領が提案した1月6日から36時間のクリスマス停戦も、ウクライナはロシア軍の態勢立て直しのための時間稼ぎであると批判して応じず、実現しなかった。

 ロシアによる徹底的ともいえるインフラ破壊攻撃で、電気や暖房、水道といったライフラインすら絶たれた中でクリスマスを迎えるウクライナ国民にとって一方的な停戦提案は、到底受け入れられるものではなかったといえよう。礼拝でのプーチン大統領の孤独な姿や悲しげな表情が強く印象に残るクリスマスであったが、それもそのはず、2023年のロシア経済の見通しには相当悲観的にならざるを得ないからだ。

 2022年2月末のウクライナ侵攻、そしてそれに伴う西側諸国の制裁開始から数週間で、ルーブルのレートは過去最低の水準に落ち、ロシア経済が急降下の状態に陥ったことは記憶に新しい。しかし政策金利を20%にまで引き上げ、通貨および資本に大幅な制限を導入するなど、ロシア中央銀行が金融危機を阻止するため機敏に動いたことが功を奏し、市場は徐々に安定を取り戻した。そのため、足元の経済は予想されていたほどの低迷を見せていない。

 2022年4月には国際通貨基金(IMF)が2022年のロシアの実質GDP成長率を8.5%減と予測していたが、10月には3.4%減にまで上方修正した。さらに12月のロシア経済発展省の見通しでは、2022年1~11月のGDPは2.1%減(通年では2.0%減)とIMFよりも高く推計している。

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