「これでも天井とは言えない。2021年もまだ伸びるはずだ」。SBI証券で外国株をウオッチしてきた榮聡シニア・マーケットアナリストは、クリーンエネルギー関連の銘柄を集めた上場投資信託(ETF)の価格推移のグラフを示し、こう話す。年初から約2倍に上昇し、米国の代表的な銘柄であるS&P500指数の伸びを大幅に上回っている。

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 “異変”を感じたのは、米大統領選の第1回のテレビ討論会でジョー・バイデン氏が優位に立った9月末のこと。温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」への復帰や、クリーンエネルギー関連インフラの整備などに4年間で2兆ドル(約215兆円)もの巨費を投じるとの公約を掲げてきたバイデン氏が有望とみるや、株式市場は敏感に反応。一段高となった。

 実は20年の年初から、環境銘柄はじわじわと上昇していた。世界の財界トップが年始に集まるダボス会議で、20年の主要議題は「環境」だった。金融市場でESG(環境、社会、企業統治)投資の流れも加速した。環境銘柄は設備関連など景気変動の影響を受けやすい事業が多いため、コロナ禍で春先には一時落ち込んだが、米大統領選の進展に呼応するように回復。その後急進した。

 まだまだ混乱が続きそうな21年の世界経済。だが、そんな中でも国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」がターゲットに据える環境問題や社会課題の解決に資する“SDGsテック”の商機は、急速に拡大する可能性がある。

10年間枯れた相場の復活

 クリーンエネルギー銘柄の上昇は、「バイデンバブル」と言えるかもしれない。電気自動車(EV)大手の米テスラの株価は、「説明のつかない水準」(アナリスト)まで上がっており、トヨタ自動車など世界大手をはるかにしのぐ時価総額を記録。米国の大胆な金融緩和による「カネ余り」状態が続いており、だぶついた投資資金が、期待先行でクリーンテックに流れてもいる。

 「エネルギーバブル」と言えばかつて、2000年代後半に再生可能エネルギー関連銘柄が注目を浴びたことがあった。この時は、中国企業が太陽光パネルに大規模参入するなどして、先行していた先進国メーカーの収益性が悪化。さらに、リーマン・ショックの影響や成長への期待に対して実際の業績が伴わないことによる失望売りなどで、環境関連市場は「10年間相場が枯れていた」(榮氏)。

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