「リゾート地、また温泉地などで余暇を楽しみつつ仕事をするワーケーションは、新しい旅行や働き方のスタイルとして普及に取り組んでいきたい」。2020年7月末、菅義偉首相(当時は官房長官)は政府の観光戦略実行推進会議でこう話した。

 ワーケーションとは「work(仕事)」と「vacation(休暇)」を組み合わせた造語。日本では17年、日本航空(JAL)が導入したものの、一般にはほとんど普及していなかった。が、コロナ禍によって雪崩を打つようにテレワークが解禁。働く場所の制限はなくなった上、首相の発言もあって注目が集まりつつある。

 飲食業とともにコロナ禍にあえぐ観光業界。観光庁の統計では、国内旅行の延べ宿泊者数は20年2月以降、前年同月比でマイナスが続き、5月には85%減まで落ち込んだ。

息の長いプラス効果に

 その救済策だった「Go To トラベル」は、休日に利用が偏り、宿泊施設の平日の稼働率が低いという長年の課題を浮き彫りにした。対してワーケーションは平日に仕事をすることがほとんどで、稼働率向上につながる。しかも「Go To」は21年6月末に終了する見込み。ワーケーションが根付いていけば、観光業界に息の長いプラス効果を与える。

 副業解禁の流れもあって、ワーケーションの実施に向けた環境整備を進める企業も増えつつある。東急不動産はその一社で、21年初めにもワーケーションのトライアルを始める予定だ。

 JALや同社グループの旅行会社ジャルパックと連携し、沖縄県の「ハイアット」ブランドのホテルを始め、東急不のグループ会社が運営する宿泊施設などで希望する社員にワーケーションに取り組んでもらう。同社は19年の本社移転後にオフィスをフリーアドレスにしており、ワーケーションで場所にとらわれない働き方をさらに進める。人事担当者は「どういう形で働くのが一番自分にとって効率が良いのかを考えられる自律的な人材に育ってほしい」と話す。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1241文字 / 全文2063文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題