「2021年はさらに多くの店がつぶれることも予想される」。東京商工リサーチ情報本部の原田三寛部長はこう話す。20年の年間倒産件数が過去最多の800件超えとなることが確実となった飲食業。「国からの資金繰り支援の効果が切れた後、21年は1000件超えの可能性すらある」(原田部長)という。

 言うまでもなく、飲食業は最もコロナ禍の影響を受けた業界の一つだ。緊急事態宣言が発令された4~5月は多くの店が一時的に営業を休止し、現在でも需要が完全に戻っているとは言い難い。とりわけ居酒屋は厳しく、ワタミが祖業である「和民」など114店を21年3月までに閉鎖すると発表。居酒屋「甘太郎」や「土間土間」を傘下に持つコロワイドは約200店舗を閉めることを明らかにした。

 市場全体が落ち込んでいることに加え、産業全体の人材不足も続く。厚生労働省によれば、20年10月の有効求人倍率は常用労働者(パート含む)全体で0.97倍だが、外食では飲食物調理が1.67倍、接客・給仕が1.75倍という状況だ。

人間よりホスピタリティーのある接客

パンケーキ店を運営するエッグスンシングスジャパンはスタートアップ企業とともに、AIアバターが接客するレジの開発を進めている
パンケーキ店を運営するエッグスンシングスジャパンはスタートアップ企業とともに、AIアバターが接客するレジの開発を進めている

 このため21年は飲食業全体で、売り上げ減少と人手不足を一気に乗り切るための“最終手段”に打って出る動きが本格化しそうだ。人でなく、「AI」や「ロボット」を使った接客である。

 ディスプレーの中にはアロハシャツを着た女性がいる。「パンケーキをください」と声をかけると、「ご覧の中からお選びいただけますか」と女性が言うのと同時に画面にパンケーキの写真が並ぶ。決済まで、客側は全く画面に触れたり、人と接したりすることはない。

 ここは、国内では23のパンケーキ店を運営しているエッグスンシングスジャパン本社(東京・港)。AI開発などのスタートアップ企業、ウェルヴィル(東京・文京)と組み、注文から会計まで実際の人間とは会話しなくて済む「AIアバターレジ」の開発を進めている。21年初頭には店舗での実証実験が行われる予定だ。

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