「The ascent out of this calamity is likely to be long, uneven, and highly uncertain.(この悲惨な状況から回復する道のりは、長く、まだらで、極めて不確実なものになる)」

 国際通貨基金(IMF)の首席エコノミスト、ギータ・ゴピナート氏は2020年秋、世界経済と新型コロナウイルスの戦いがいかに難しいものかについてこうメッセージを発信した。

 同氏が言うように20年、世界がいかに「悲惨な状況」に陥ったかは、数字を見れば一目瞭然だ。まず、世界経済全体で20年は4.4%のマイナス成長に陥る見通しだ。さらにはすでに160万人以上の命が失われており、経済の悪化に伴って少なくとも9000万人が極度の貧困に陥る可能性もある。

コロナ禍で世界では160万人以上の命が失われている(写真:AFP/アフロ)
コロナ禍で世界では160万人以上の命が失われている(写真:AFP/アフロ)

 「まだら(uneven)」で、「不確実(uncertain)」な状況も、すでに多くの人が知る通りだ。IMF試算によれば、20年の米国経済の下振れはマイナス4.3%、ドイツはマイナス6.0%、イタリアやスペインは2桁のマイナスとなる一方、中国は1.9%成長で、まさにまだらだ。

 不確実性でいえば、ゴピナート氏の発言の後、欧州にはたちまちコロナ第3波が到来した。再ロックダウンに伴ってさらなる景気悪化が今まさに懸念されている。

 もっとも、世界の試練と苦境の元凶であるコロナ禍を巡っては、「お先真っ暗」の状況からは、わずかながら脱しつつある。感染者の増加は依然止まらないが、リスクを抱えながらも英国などではワクチンの市民への投与が始まった。直撃を受けた日本の飲食業などでも、完全自動化など反撃の態勢が固まり始め、コロナ禍を逆手にとったニュービジネスも生まれつつある。

 だがたとえ状況が好転しても、21年、世界はなお不安定な状況が続く。これまでに世界を揺るがし続けてきたコロナ禍以外の2大要因、「米国の混乱」と「米中対立」に改善の兆しが見えないからだ。

分断、亀裂に重なったコロナ禍の悲劇

 トランプ大統領が誕生して4年。米国は環太平洋経済連携協定(TPP)やパリ協定をはじめ数々の国際協調の枠組みから抜け、自国ファーストを貫いた。至る所に壁や分断線がつくられ、民主主義さえぐらついた。政権の最終コーナーに差し掛かったときに起きたコロナ禍は、明らかにこれらの状況の悪化に拍車をかけた。

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