ただ、SDGsブームを引っ張る欧州は足元の新車販売に勢いを欠く。むしろ「公的」の主役は自動車の最大市場、中国だ。

 ここ数年、中国の大都市は深刻な渋滞や大気汚染の対策としてナンバープレートの発給制限などをしてきたが、コロナ禍を機にこれらの緩和に動いた。販売補助金も大盤振る舞いされており、盛んな公共工事を背景にトラックなど商用車の発注も相次ぐ。

 2月に前年同月比8割減となった中国国内の自動車販売は、4月にプラスへと転換した。調査会社の米アーサー・D・リトルによると5月以降は二桁増が続いており、年間を通してプラスとなる可能性もある。「今のところ状況が変わる兆しはなく、官主導の自動車好況は当面続くだろう」(アナリスト)というのが業界の一般的な見方だ。

中国などでの公的支出や金融緩和が自動車市場を底上げしている(写真:Bloomberg / Getty Images)
中国などでの公的支出や金融緩和が自動車市場を底上げしている(写真:Bloomberg / Getty Images)

 次に「金余り」。こちらの主要な舞台はコロナ禍で最多の死者を出している米国だ。

 日本は2度の補正予算で計60兆円を確保しているが、米国のコロナ対策費はこれまでに3兆ドル(約312兆円)規模に上る。さらに今後、雇用対策などに9000億ドル規模を充てる案が出ており、11月の大統領選で当選を確実にしたバイデン前副大統領もこの案を支持する。

 日米に限らず、世界で繰り広げられる公的支出と金融緩和。その受け皿となっているのが米ナスダック市場やビットコインだが、だぶついたマネーはぜいたく品である車にも向かっているというわけだ。

健全な好況でないのは百も承知

 当然のことながら、専門家の中には今の状況は“健全な好況”とは言えないという指摘も多い。

 SBI証券の遠藤功治氏は「米国では誰でもお金を借りやすい環境になっている」と指摘する。査定が緩くなったことでローンの平均年数が延びているといい、「サブプライムローンの車版のようになるのでは」(関係者)と懸念する声も広がっている。また自動車産業だけ好調でも、観光業や小売業など他産業の低迷が続けばやがて車も売れなくなり、全体経済も立ち行かなくなるとの声もある。

 それでも、少なくとも21年の間は「自動車産業は比較的いい状況が続く」(アーサー・D・リトル・ジャパンの鈴木裕人パートナー)というのが多くの関係者の結論。SBI証券は21年の世界の新車販売を、20年予想から12%増の8700万台になると想定する。

 では自動車産業に身を置くプレーヤーが21年、安閑としていられるかと言えば話は別だ。

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