
「安心安全な大会にしていく。都民や国民の理解を得られるように丁寧に説明していきたい」。東京五輪・パラリンピックを巡り、開催延期や新型コロナウイルス対策に関する追加経費が2940億円に上ることが明らかになった12月4日、東京都の小池百合子知事はこう話した。
競技会場の再確保や人件費など延期に関わる費用は1980億円。選手の滞在期間中の検査費など新型コロナ対策費が960億円に上るとしている。2019年末段階では大会経費を計1兆3500億円と見込んでいたが、コロナ禍によって経費が2割増えた計算だ。大会関係者数の10~15%程度の削減や会場の仮設テント、プレハブの削減などを通じ約300億円の支出減を図るものの、「焼け石に水」と言わざるを得ない。
大会組織委員会の追加負担分、約1000億円は予備費や延期に伴う損害保険、スポンサーに要請している協賛金の追加拠出などを財源に充てる方針だが、残りは公費で賄われることになる。
やめれば4兆円消失という窮地
見込んでいた経済効果も延期などによって尻すぼみしている。都によると、五輪開催で13~30年に発生する経済効果は約32兆円を見込んでいた。ところが、開催が延期になったことで余計な支出が増え、波及効果も一定程度損なわれる。関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算では、1年間の開催延期によって6408億円の経済効果が失われたという。
五輪が中止となれば、さらに巨額の損失が発生してしまう。
4兆5151億円の損失が発生するというのが宮本氏の試算。国立競技場をはじめとする会場整備などで既に多額の投資が完了している今、国際オリンピック委員会(IOC)も国も、中止は選択肢にないとの立場を示している。後戻りはもうできないというわけだ。
このため、組織委などは新型コロナの感染状況などを見ながら来春までに大会の観客数の上限を決める方針だ。ただ「コロナ禍が一定程度落ち着いたとしても、多くの観客を入れるのは難しい」。こう話すのは国際的なスポーツイベントで運営幹部を務めた経験を持つA氏だ。
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