
毎年の恒例である本誌の翌年予測企画だが、2020年の的中率は極めて微妙なものとなった。産業動向から流行現象まで多くの予測を狂わせたのは言うまでもなくコロナ禍だ。予測が外れた原因を分析するほど20年がいかに「異常な年」だったか見えてくる。
19年12月23日・30日合併号の特集「2020年大転換」では、株式・不動産相場から流行現象まで14の予測を掲載した。このうち「明らかに外れた」と認めざるを得ない予測がいくつかある。まず1つ目は「年前半は五輪準備で日本全体がパニックになる」だ。
記事では、「熱中症リスクに選手や観客がさらされる」「テロの恐れがある」「首都圏の交通が大混雑し、東京駅や新宿駅では平常時の2倍以上の人が構内にあふれる」「宿泊施設が最大4000室不足し、東京への出張が困難になる」など様々な予測を並べた。いずれも各シンクタンクの統計資料などを土台にした予測だったが、五輪そのものが延期され、すべてが外れるという結果になった。近代五輪が開催を延期するのは1896年のアテネ大会以来、1世紀以上の歴史の中で初めての出来事になる。
「北九州の大ブレイク」もあえなく空振り
続いて外れとなった予測が「インバウンドで北九州が、岐阜の白川郷並みの一大名所になる」だ。急速に拡大するインバウンド市場で、北九州地区が主役に躍り出るという観測。最近は、ネット上で「修羅の国」「一家に一台ロケットランチャー」などと揶揄(やゆ)される、治安のよくないイメージを逆手にとったユニークな自虐PR戦略で有名な北九州だが、実は「外国人受けしそうな観光資産」が集積した地域でもある。
世界遺産の官営八幡製鉄所関連施設や地元住民の台所「旦過市場」などを取材し、「確かに外国人受けする」との確信を持っての予測だったが、コロナ禍で、そもそも日本全体の20年1~10月の訪日外国人客数(推計値)は前年同期比85.1%減の400万人という惨状(日本政府観光局調べ)。インバウンド市場そのものが壊滅する中、結果としてとんちんかんな予測となってしまった。

3つ目の外れ予測は、「コーヒー不足が深刻化する」だ。こちらは、国際的な研究機関「ワールド・コーヒー・リサーチ(WCR)」による、コーヒー生産の6割程度を占める「アラビカ種」の生産適地が50年に半減するという指摘がベース。地球温暖化による生産地減少や年平均伸び率が6%超にのぼる中国の需要急増、世界的な農家のコーヒー離れなど、将来のコーヒー不足を予見させるファクターは多く、どう考えても“堅い予測”と思われた。が、現実には20年、コーヒーの需給は逼迫するどころか「世界で消費が減ってしまった」(日本コーヒー協会)。
国際コーヒー機関(ICO)によると、コーヒー年度である19年10月~20年9月の世界消費量は前年度に比べ1%減とマイナスに転じた。現時点でコーヒー消費量の7割を占めるとされる日米欧でロックダウン(都市封鎖)や外出自粛策がコロナ禍に伴い実施され、コーヒーを外で飲む機会が減少したことなどが要因という。
大きく外れた予測はまだある。「就活が超・早期化する」もその1つだ。企業が学生を早く囲い込む動きによって就職活動が早まり、大学が仕事探しの場になる懸念を指摘したが、20年は逆に早期化にブレーキがかかった。原因はやはりコロナ禍。明治大学就職キャリア支援部の舟戸一治部長は「20年2月の終わりごろから説明会を取りやめる企業が出始め、コロナ禍によって21年卒の就職活動が突然足踏みした」と話す。
もっとも、ここまでの予測の不的中はいずれも、「コロナ禍という特殊事情によるもの」との弁明が可能かもしれない。だが中には、残念ながら「普通に時勢を読み違えた」と言われても仕方がない予測もある。例えば株価予測だ。
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