石川県小松市の温泉旅館、法師は奈良時代の創業で、2代目以降は当主が同じ名前を1000年以上引き継いできた。現当主は46代。浮き沈みも経験しながら事業を次の世代に継承する(登場する企業の創業年などには諸説ある)。

粟津温泉のルーツとなる旅館、法師は2018年に創業1300年を迎えた(写真=栗原克己)
粟津温泉のルーツとなる旅館、法師は2018年に創業1300年を迎えた(写真=栗原克己)

 1000年を越える企業はかつて都が置かれた奈良や京都の周辺だけでなく、全国に点在している。都から離れた場所でずっと存続してきた企業も少なくない。

 その理由について静岡県立大学の落合康裕教授は「温泉などが経営資源になっていることが多いほか、不便な場所であるほど参入障壁が高くなったり、場所が差異化につながったりする面があるのではないか」と説明する。

 石川県小松市にある粟津温泉の歴史は奈良時代にさかのぼるという。粟津温泉のルーツとなる旅館、法師は2018年に創業1300年を迎えた。周辺には山中温泉、山代温泉など古い歴史を持つところが多いが、これらを含めても法師は最古の旅館となっている。

 伝承によると、粟津温泉を開いたのは、近隣の白山で修業し那谷寺を創建した泰澄大師。修業を始めた1年ほど後の養老2年(718年)、泰澄は粟津の地で温泉を見つけ、地元のきこりの息子であった雅亮法師に「末永く人々のために役立てるがよい」と湯守を任せた。法師の歴史はここから始まったと伝わる。一般には公開していないが、法師には温泉を開いた泰澄大師が彫ったとされる木造の仏像が伝わっている。

 雅亮が亡くなると、養子の五郎が善五郎を名乗り2代目を継承した。それ以来、当主は僧侶の呼称である法師を姓に、名は2代目から取って「法師善五郎」を名乗り、代々ファミリーで引き継いできた。46代に当たる現在の当主、法師善五郎氏は「創業のいきさつから、温泉と仏教のつながりを感じる」と話す。

46代に当たる現在の当主、法師善五郎氏(写真=栗原克己)
46代に当たる現在の当主、法師善五郎氏(写真=栗原克己)

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