山形県の蔵王温泉にあるおおみや旅館は、創業1000年を超えるとされる。運営する蔵王カンパニー(山形市)の伊藤八右衛門会長は、税理士としての知見を生かしながら、事業を少しずつ伸ばしてきた。

蔵王カンパニーのルーツであるおおみや旅館内には源泉がいくつもある(写真:尾苗清、以下同)
蔵王カンパニーのルーツであるおおみや旅館内には源泉がいくつもある(写真:尾苗清、以下同)

「八右衛門」の名を継いだ33代目

 蔵王温泉は蔵王連峰の麓の標高約900メートルの場所に位置しており、四季それぞれに魅力がある。最も観光客が多いのは冬場だ。スキー場と隣接し、周囲は樹氷観賞でも知られる。山形県内最古の温泉場とされ、平安時代に編さんの歴史書『日本三代実録』には当地の酢川温泉神社についての記録がある。古くは酢川温泉と呼ばれたという。信仰の山である蔵王連峰を臨み、江戸時代には最上高湯と呼ばれた湯治場だった。

 戦後になって1951年にはスキーリフトが開業したことなどを契機に、全国から観光客が訪れるようになった。蔵王温泉という名は比較的最近で、昭和30年代に新聞の「観光地100選」という企画に際し、周囲の2カ所の温泉とともに蔵王山にちなんで蔵王温泉となった。

 蔵王カンパニー(山形市)は蔵王温泉において、おおみや旅館、蔵王四季のホテル、蔵王国際ホテルを運営する。ルーツとなったおおみや旅館は創業1000年以上といわれ、蔵王温泉のメインストリートで旅館が立ち並ぶ「高湯通り」の最深部付近にある。近くには酢川温泉神社のほか、足湯や共同浴場などがある。

 敷地には古くからの源泉が6つあり、その後に加わった分も合わせると源泉の数は10もある。それだけに湯量は非常に豊富で文字通りの源泉掛け流し。源泉の一部は、かつておおみや旅館からの嫁入りで親戚になった別の旅館に、今もそのまま提供している。専門書の『老舗企業の研究』に掲載の「老舗企業設立年表」(日本経済大学大学院の後藤俊夫特任教授が作成)では、同社を1000年企業の1社だとしている。

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