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謝罪の本質をSNSでの炎上SDGs(持続可能な開発目標)などから探ってきたシリーズ「謝罪の流儀2020」。今回は、取材を通じて取材班が2021年に企業が直面する謝罪リスクを予測する。

(写真:PIXTA)

 2021年は謝罪に見舞われる企業が増えるのではないか──。企業広報や危機管理コンサルタント、社会学などの研究者らへの取材を通じ、取材班はそんな結論に達した。取材先の多くが、企業を取り巻く「謝罪圧力」の高まりに身構えている。謝罪をビジネスにしている危機管理コンサルタントなどにとっては「当たり年」かもしれない。だが、企業や社会にとってはうれしくない話だ。

 未曽有の感染症ショックに見舞われた20年は、話題が新型コロナウイルスに集中したこともあり、印象に残る謝罪案件が少なかった。全国紙・一般紙で「謝罪」をキーワードに記事検索すると、20年は12月14日までで約1万8000本。同年の全記事本数に占める割合は約0.6%で、同0.9%の18年、同0.8%の19年より明らかに少ない。ただ、21年は20年の反動として不祥事が噴出するといった単純な話ではない。

 関係者らが危惧する背景の一つが、働き方の劇的な変化だ。新型コロナの環境下においてはテレワークが浸透し、オンライン会議が定着した。出勤せずとも仕事はできる。大企業を中心に、終身雇用などによって「会社」という共同体に所属するという意識が強い「メンバーシップ型」から、職務記述書に沿った雇用契約を結び会社とドライな関係を築く「ジョブ型」への移行が進み始めた。

 これはある意味、時代の要請でもあった。新型コロナによる需要急減で人材を持つことのリスクが改めて浮き彫りになり、多くの企業が「会社=家族」というノスタルジックな考え方と距離を置くようになった。

 例えば、電通。21年1月、一部の正社員を業務委託契約に切り替え「個人事業主」として働いてもらう制度を導入する。

 社員にはよく働いてほしいが、生活は保証したくない。そんな会社の本音は「副業OK」などとして制度化される。従業員の会社に対するロイヤルティー(忠誠心)やエンゲージメント(愛着)が低くなっても不思議ではない。そうなると、会社として怖いのは、内部の「文句」が外にあふれ出ることだ。

内部告発のハードルが下がる

 「生半可な気持ちでは無理。下手すれば一家離散するし、企業社会では偏見の目で見られて職に就けないことも覚悟しなければならない。こんなに孤独なことはない」

 09年に当時、監査役として勤務していたトライアイズの経営陣から監査妨害を受けたと日経ビジネスや自身のサイトで主張し、会社を提訴した古川孝宏氏は「内部告発」のハードルの高さを強調する。

 古川氏の場合、家族の絆は切れなかったものの、会社を追われ収入は激減した。「金銭欲や出世欲に縛られていたら内部告発はできない」と言う。

 その後、コーポレートガバナンス(企業統治)や内部統制に対する意識の高まりはあったが、不正を見つけても「会社での出世」や「会社の体面」を優先して、見て見ぬふりをする者が多かったのも確かだろう。ただ、ジョブ型の雇用や、新型コロナに伴うテレワークが一般化し、職場の雰囲気は変わってきた。ニューノーマルにおいては、会社はかつてほど帰属意識の高い組織ではなくなり、内部告発のハードルは下がった可能性がある。

 過去を振り返ると、謝罪のムードには浮き沈みがある。