ドラマ「半沢直樹」で最も印象的なシーンといえば「土下座」。頭の髪を短く刈り込む「丸刈り」と共に、謝罪の最終兵器ともいえる行為だ。これらには、そもそもどのような意味があるのか。源流を知れば、正しく使うことができる。

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 日経ビジネスは2015年から毎年12月に、不祥事を起こした企業などがどのような謝罪をしているかを検証する「謝罪の流儀」という特集を掲載してきました。今年も「謝罪の流儀2020(仮)」を掲載する予定です。つきましては読者の皆さまに、記憶に残る謝罪や、謝罪に関する意識についてアンケートを実施します。アンケート結果は日経ビジネス電子版や雑誌の日経ビジネスに掲載する予定です。ご協力をお願いします。

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 謝罪における究極の飛び道具といえば何か。真っ先に思い浮かぶのが、ドラマ「半沢直樹」のシーンでも話題となった「土下座」だろう。そして、男性なら若かりし頃に経験した人もいると思われる「丸刈り」が挙がるのではないか。

 いずれも、インパクトが大きく謝罪を受け入れようとしない相手の気持ちを揺さぶる破壊力が大きい半面、使い方を間違えればひんしゅくを買う可能性もある。できれば使いたくない謝罪の最終兵器ともいえる行為だが、実は、日本文化に根ざした「深い」意味合いがある。

 日本において、相手への敬意や感謝を示すお辞儀には3種類あるとされる。体を傾ける角度によって、15度の会釈、30度の敬礼、45度の最敬礼だ。そして、かつて最敬礼の「特別編」だったのが土下座だ(ちなみに、座ってするお辞儀は「座礼」と呼ばれる)。日本礼法教授の齊木由香さんは「極度に敬う高貴な相手に対し、畏敬の念を表現する礼式だった」と説明する。

 そもそも、戦いが日常だった時代、頭を下げるという行為は、相手に斬られるリスクを伴った。いうなれば、深いお辞儀とは、犬や猫が心を許した相手におなかを見せる行為に近いのかもしれない。土下座ともなると、「どうにでもしていい」と伝えているようなものだろう。

 そんな土下座が謝罪の定番へと変容するのは、大正時代から昭和にかけてのことだそうだ。齊木さんによると、「相手よりも明らかに下」という「恥」を自ら表現することが、許しを請うことに結びついたのだという。その後、人気テレビ時代劇「水戸黄門」がシーンに取り入れたことで、一般に普及したという説が有力だ。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

 では、正しい土下座とはどういうものか。

 「まず、相手よりも低い場所に下がって土の上で正座し、手のひらを地面につけ、額も地につけて伏せる。そして、相手が『下がってよし』というまで動かない」(齊木さん)。抵抗できないくらいに身を投げ出し、相手の差配に委ねるというわけで、全面降伏を表現するのにこれほどぴったりとくる行為もない。

 本来は自ら進んで行うものだから、土下座に強要はそぐわない。なんとなくなじみがあるのは、謝罪を受ける側が「土下座しろ」と怒鳴るシーンだが、過去には土下座を強要したことで逮捕された例もある(いずれも店員が客に土下座を求められた2013年のしまむら事件や14年のファミリーマート事件など)。みずほ中央法律事務所の三平聡史弁護士は「危害を加えるなどと予告して脅した場合は強要罪に問われる可能性が高い」と指摘する。

「丸刈り」は「雑念を捨てる」

 一方、罰を連想させる「丸刈り」はお坊さんの頭に由来するとされている。髪を欲望の象徴や不浄な存在と捉えるなど諸説はあるが、仏教においては、頭を丸めることで「雑念を捨てるという意味合いが大きい」(住職の中根善弘・日本仏教協会代表理事)という。戒律で決められているわけではなく、修行に身を入れるための慣習が根本にあるという。

(写真:PIXTA)
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 仏教の修行にはもともと煩悩や執着を断つという考えがあり「禁欲」がセットだった。1800年代後半に僧侶の肉食妻帯は解禁されたようだが、制約ある生活をしているイメージは残る。

 丸刈りが「辱め」だという論理はお坊さんに失礼だが、戒めの効果があることは容易に想像できる。そこで「失敗をして罰を受けている間はお坊さんのような生活をしなさい、ということになったのではないか」と中根氏はみる。

 そう考えれば、謝罪で自ら丸刈りにするというのは、修行僧のような厳しい環境に身を置くことを宣言して相手の怒りを和らげる、という意味があるのかもしれない。「丸刈り謝罪」は2013年に人気アイドルグループAKB48のメンバーが行って世間の驚きを呼んだ。20年6月には、広島県議時代に前法相の河井克行容疑者から2度にわたって計60万円を受け取った広島県安芸高田市の児玉浩市長が実行したが、その後辞職した。

 「謝罪では潔さが好まれるが、許しを期待している『下心』が見えれば、とたんにハードルが高くなる」と、社会心理学者の大渕憲一・東北大学名誉教授は指摘する。つまり、土下座や丸刈りはまさに両刃の剣。歌舞伎の要素も盛りだくさんだった「半沢直樹」で土下座シーンは「花形」だったが、実際に行うとなると「リスクが高い」(大渕氏)のは確かだろう。

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 アンケートではまず、2015年から5年間の特集表紙に掲載した「謝罪カレンダー」の中の主な謝罪事例(59事例)から、読者の皆さんの記憶に特に残っているものを選んでいただきます。過去の謝罪カレンダーは以下のリンクからご確認いただけます。

 ぜひ、ご協力をお願いします。

■過去5年の謝罪カレンダー
2019:謝罪の流儀 令和元年 平成までの謝り方は通用しない
2018:定石破りの日産 常識外れの日大
2017:日産、神鋼は何を間違えたのか
2016:一夜明ければ社会の敵に
2015:炎上の旭化成、火消しのトヨタ

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