(写真:PIXTA)
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 不動産業の就業者数はこの1年で非常に増えている(労働力調査)。主な産業の中では、増えた順に、1位:医療、福祉、2位:情報通信業、3位が不動産業、物品賃貸業となっている(2020年10~12月期の前年同期比)。ちなみに、主な産業の最下位は、宿泊業、飲食サービス業でコロナ休業の直撃を受けた格好になる。不動産の中でも、ホテル・飲食・物販は被害が大きいが、それ以外、特に住宅と物流施設は活況を呈している。コロナが起こした需要喚起は不動産には総じてプラスに働いていると考えた方がいい。

アベノミクス以降の就業者の大幅増

 数年前、菅義偉首相が官房長官だった頃、経営者の会合で冒頭スピーチを聴く機会があった。当時の菅官房長官は、アベノミクスの成果を数値を羅列して話していた。株価はいくらからいくらに、失業率は何%から何%に、といった具合だ。就業者数はアベノミクス前の2012年と比較して2020年では多い順に、医療、福祉で154万人、情報通信業で52万人、教育、学習支援業で44万人、学術研究、専門・技術サービス業で39万人、不動産業、物品賃貸業で28万人増えている。不動産業はここでは5番目である。

 不動産業が活況な理由は2つある。1つ目は、アベノミクス3本の矢の1本、金融緩和によるところが大きい。金融緩和されると、金融機関はお金の貸出先を増やす必要があり、担保を取れる不動産には融資を出しやすいので資金が大量に流れ、不動産価格が上がる。逆に、金融を引き締めるときには、不動産価格が下がり、倒産する不動産会社が増えることは過去に何度も起きている。2つ目は、2013年から本格的に始まったアベノミクスにより失業率が下がり、就業者が増え、家賃を払ったり、持ち家を購入したりする人が増えた。この結果、不動産業界の就業者数は増えているのである。

アベノミクスの貯金は大きかった

 アベノミクスは長期政権の後、菅政権にも引き継がれて、既に8年目に突入している。こうして、不動産の価格も稼働率も長期間上昇し、100%に近い稼働率に達していた。そこにコロナショックが襲うものの、非常に高かった稼働率は下がっても影響は限定的だった。いわゆる「発射台」があまりに高かったということだ。これはオフィスも住宅も同じである。実際、都区部のオフィスは稼働率が99%、住宅は96%だった。

 また、緊急経済対策も功を奏している。失業率は4月の2.6%から12月は3.0%で、0.4%しか悪化していない。人の動きを制限し、一部の経済活動を止めることで最も懸念されたことは失業率の悪化であった。これを予防するための緊急経済対策が3回の補正予算で実施された。

雇用調整助成金の効果

 緊急経済対策の1つで、雇用維持に最も効果的だったのは、雇用調整助成金だ。

 雇用調整助成金とは、休業・教育訓練・出向などの際に、国から支給される助成金のことで、今回は休業が主な対象となった。コロナショック対応として、以下の4点が行われ、かつてないほどの手厚い対策が取られた。

  • 助成額上限の引き上げ(1人1日あたり8330円→1万5000円)
  • 中小企業の助成率が9/10→10/10拡充
  • 2020年4月1日まで遡って適用
  • 緊急対応期間は延長中

 この効果は失業率換算することができる。
 上記補正予算の効果分析をすると、以下のようになる。

  1. 確保予算額:2.8兆円
  2. 1人月予算(最大):1.5万円×20日=30万円
  3. ①÷②=930万人月
  4. ③÷11カ月(4~翌2月まで)=85万人
  5. ④を失業率換算すると、1.2%相当となる
続きを読む 2/2 世界的なカネ余りが下支えする

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