2022年1月に施行される改正電子帳簿保存法。電子データの形で受け取った領収書などの電子保存が全事業者に義務化されるはずが、12月10日に与党が決定した2022年度の与党税制改正大綱で2年間猶予されることになった。経費精算は経理部門のみならず、全てのビジネスパーソンに関わってくる。領収書の電子保存「義務化2年猶予」で知っておくべきことを10のポイントにまとめた。

1:電子帳簿保存法はどんな法律?
2:2022年1月に何が義務化される予定だった?
3:義務化はなぜ2年間の猶予になった?
4:どの程度の事業者が法改正を把握していた?
5:どの程度の事業者が義務化への対応を進めていた?
6:そもそも「電子保存」とは?
7:電子保存しなければ罰則がある?
8:事業者はどう対応すべき?
9:どんなサービスがある?
10:インボイス制度との関係は?
1:電子帳簿保存法はどんな法律?
電子帳簿保存法は、所得税や法人税などの国税に関係する書類の電子的保存を認める法律だ。意外にも新しい法律ではなく、1998年に施行されたもので何度も改正が繰り返されている。
もともとは電子帳簿の保存を推進するというよりは、電子帳簿の保存を厳しい要件のもとで限定的に認める法律だった。例えば、今年までは電子保存のために税務署長への申請が必要で、特に中小企業での国税関係書類の電子保存の広がりは限定的だった。
2:2022年1月に何が義務化される予定だった?
22年1月施行予定の改正電子帳簿保存法では、全ての企業や個人事業主に電子保存を義務付けるという点でこれまでの改正とは一線を画し、電子データで受け取った書類を電子データで保存することを義務付けていた。取引先企業から電子メールで送付された領収書やアマゾンなどのECサイトで買ったオフィス用品の領収書を紙に印刷して保存することが禁止される。
3:義務化はなぜ2年間の猶予になった?
改正法の周知や対応が進んでおらず、中小企業や個人事業主を中心に現場の対応が追いつかないと国が考えたため、電子保存の義務化には2年間の猶予が設けられた。
4:どの程度の事業者が法改正を把握していた?
義務化を1カ月前に控えた段階でも、法改正やその内容自体をそもそも知らない担当者は少なくなかったようだ。SBIビジネス・ソリューションズ(東京・港)が11月下旬に実施した経理・財務・会計担当者1073人に対する調査によると、法改正自体を知らないと回答した人は全体の35%、改正は知っているが改正内容を知らないと回答した人も全体の35%で、7割近い回答者が改正内容を理解していなかった。
5:どの程度の事業者が義務化への対応を進めていた?
SBIビジネス・ソリューションズの調査によれば、法改正を知っていた人のうち17%のみが法改正へ対応済みだという。義務化1カ月前の調査にもかかわらず、52%は「対応に向けて動いている」と回答した。残り3割の回答者の大半が「対応していない」と回答しており、回答企業の多くがそもそも電子保存の義務化に対して何も対応できていないと推測できる。
電子保存の義務化後も紙の請求書などは紙のままでの保存が許容される。そのため、電子保存が義務化されても電子書類を避けて、あえて紙だけで取引書類をやり取りするようになり、電子化に逆行するという声も現場からは出ている。
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