円安の勢いが強い。10月15日、一時1ドル114円台と約3年ぶりの水準まで下がった。為替動向は製造業・非製造業問わず幅広いビジネスに影響を及ぼし、岸田文雄首相も12日の国会で円安に言及した。外国為替市場、特にドル円相場について知っておきたい10項目をまとめた。

(写真:共同通信)
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1:対ドルでの円安はどこまで続きそうなのか?
2:いま円安が進んでいるのはなぜ?
3:円安を引き起こす米金利上昇の理由は?
4:円安はいいことなのか。メリットとデメリットは?
5:「悪い円安」ってどういう意味?
6:企業は為替変動にどう対応しているの?
7:外為市場を動かすのは誰?
8:FX取引のトレンドは?
9:そもそも外為市場ってどう始まった?
10:政府は外為市場に介入するの?

1:対ドルでの円安はどこまで続きそうなのか?

 1つの節目は1ドル=114~115円だ。2017年以降、ドル円相場は105~115円の範囲にほぼ収まってきた。企業収益を基に割高・割安が判断できる株価と異なり、外国為替市場では絶対的な「ものさし」が存在せず水準を判断しづらいため、「経験則」が壁として意識されやすい。115円に近づけば、「そろそろ限界か」とみてドル買いポジションの利益を確定したり、円高方向への反転を狙ってドル売り・円買いを仕掛けたりする動きが強まりやすいわけだ。

 この壁を越えるようなら、次の節目としては16年12月の118円台(米大統領選でトランプ氏が勝利した後のいわゆる「トランプラリー」でのドル高局面)や、15年から16年初めにかけての120円台(日銀の異次元緩和を背景にした円安局面)が意識される。

2:いま円安が進んでいるのはなぜ?

 直接的な理由は「ドルが買われているから」。その主因は米金利の上昇だ。9月下旬以降、米長期金利(10年物国債利回り)は1.3%台から一時1.6%台に急上昇しており、足元のドル高・円安が始まった時期と一致する。振り返れば、米長期金利が1%近辺だった年明けから1.7%台に上昇した3月末にかけて、円相場は102円台から110円台まで一気に下落しており、連動性は高い。

 「金利の高い通貨は買われる」のが外為市場の有力な経験則の1つだ。外為に絡む金融取引は多様だが、あえて単純化すると、低金利通貨を保有し続けるよりも高金利通貨で運用した方がリターンを得やすいためだ。例えば現時点では、日本国債よりも米国債の方がより多い利息収入を期待できる。

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