4:中国のほかの不動産開発会社は大丈夫なのか?
この点が不透明なことが、金融市場関係者の疑心暗鬼を呼んでいる。スイスの金融大手UBSが、レバレッジ比率や発行している債券の満期時期などを考慮した分析では、10社ほどが第2、第3の中国恒大になりうると判定できたという。現時点では大丈夫でも、不動産市況が今後悪化し続ければ、中国の不動産開発会社にとっては逆風だ。
5:日本企業への影響は?
UBSがリストアップした10社の売上高を合計すると、中国恒大の2.7倍に相当する規模で大きい。まず連想されるのがマンションや大規模開発に伴う需要を取り込んできた住宅設備メーカーへのマイナス影響だ。TOTOやダイキン工業の株価が軟調なほか、コマツや日立建機といった建設機械メーカー、ファナックや安川電機といったロボットメーカーの株価も弱い。
6:リーマン・ショックのような金融危機は起きる?
市場関係者の見方を総合すると、リーマン・ショックのような金融危機にはならないというのがコンセンサスだ。そもそも中国恒大は事業法人で、金融機関のリーマン・ブラザーズとは異なる。UBS SuMi TRUST ウェルス・マネジメントの青木大樹日本地域CIOは「政府の介入を伴う再編と一部事業売却が進む。今後1年内の住宅価格の下落は大きくても4%程度」がメーンシナリオとする。中国の不動産市況が多少冷え込んでも、グローバルな経済活動が一気に縮むとは考えにくい。「あくまで中国の不動産業の問題」(日銀の黒田東彦総裁)、「中国固有の状況」(FRBのパウエル議長)、との指摘が多い。ただ、経営破綻のドミノが発生して金融機関や市場関係者の間でパニックが生じるようなら、経済危機につながる可能性も否定できない。
7:中国政府は救済しないの?
厳密な意味での救済は期待薄だ。「住宅は住むためにあり、投機のためではない」と数年前から習近平(シー・ジンピン)氏ら中国の国家首脳は言及してきた。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストも「不動産部門の債務縮減は2010年代から中国当局が進めてきた方針」でサプライズはないという。
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