日本でも猛威を振るう新型コロナウイルスの変異株。「デルタ株」の感染が急拡大しており、「ミュー株」などの新たな変異株も国内での感染が確認された。そもそも変異株とはどのようなもので、それぞれどんな特徴があるのか。世界で次々と発見されている新型コロナウイルスの変異株について、知っておきたい10項目を整理した。

現在、日本で猛威を振るっている変異株の多くはデルタ株だ(写真:国立感染症研究所提供)
現在、日本で猛威を振るっている変異株の多くはデルタ株だ(写真:国立感染症研究所提供)

1:新型コロナウイルスの変異株とは何?
2:変異が起きる仕組みは?
3:現在確認されている主な変異株の種類は?
4:なぜ株の名前はギリシャ文字で表記される?
5:変異株にはどんな特徴がある?
6:報道で目にする「N501Y」や「L452R」はどういう意味?
7:変異株にはワクチンが効きにくい?
8:日本国内で感染が確認されている変異株は?
9:変異株の感染予防のための対策は?
10:今後、変異株はどうなっていきそう?

1:新型コロナウイルスの変異株とは何?

 生物やウイルスの遺伝情報が変化することを「変異」と呼ぶ。一般的にウイルスは増殖や感染を繰り返す中で、その遺伝情報は少しずつ変化していく。幾つかの遺伝情報の変異により、従来のウイルスとは異なる性質を持つようになったものを変異株といい、世界保健機関(WHO)はそのリスクの評価に基づいて、注目すべき変異株(VOI)と懸念される変異株(VOC)とを定義し、「アルファ株」「ベータ株」などの命名を行っている。

 日本でも国立感染症研究所が、主に感染性や重篤度が増す・ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した可能性のある株をVOC、主に感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される株をVOIとして分類している。

2:変異が起きる仕組みは?

 ウイルスは自己増殖できないため、生物の細胞のなかで複製が行われる。例えば、新型コロナウイルスがヒトの細胞内に侵入すると、RNAの情報からウイルスを形成するためのたんぱく質がつくられる。それと同時にRNA自体も大量に複製されるが、その時にコピーミスが起こることで少しずつ変異する。ウイルスの性質に関わる遺伝情報のコピーミスが起こると、性質も変化する。

3:現在確認されている主な変異株の種類は?

 VOI(注目すべき変異株)とVOC(懸念される変異株)に該当する変異株に対して、WHOはギリシャ文字による命名を行っている。現在はアルファ(α)~ミュー(μ)までの変異株に分類されている。

 VOC、VOIに当てはまる変異株は以下の通り。

VOC(懸念される変異株)

  • アルファ株(2020年9月に英国で発見)
  • ベータ株(2020年5月に南アフリカで発見)
  • ガンマ株(2020年11月にブラジルで発見)
  • デルタ株(2020年10月にインドで発見)

VOI(注目すべき変異株)

  • イータ株(2020年12月に複数の国で発見)
  • イオタ株(2020年11月に米国で発見)
  • カッパ株(2020年10月にインドで発見)
  • ラムダ株(2020年12月にペルーで発見)
  • ミュー株(2021年1月にコロンビアで発見)