「新市場区分選択についてのお知らせ」「プライム市場基準充足への取り組みについて」──。東京証券取引所の適時開示情報閲覧サービス(TDnet)で最近こうしたタイトルの開示が増えてきた。来年に控える東証の市場再編を巡り、上場企業側の対応が活発になってきた証しでもある。株価に影響を与える可能性もあり、投資家の注目も高まっている。市場再編によって一体何が変わるのか、知っておきたい10項目を改めて整理しておこう。

投資家も注目する東京証券取引所の市場再編(写真:PIXTA)
投資家も注目する東京証券取引所の市場再編(写真:PIXTA)

1:東証の市場再編とは何?
2:再編の狙いは?
3:投資行動に影響するの?
4:再編で株価は上がるの? 下がるの?
5:株主優待の廃止が増える?
6:新区分で「不適合」とされた企業はどうなる?
7:今後のスケジュールは?
8:海外市場の区分はどうなっているの?
9:専門家は再編をどのようにみている?
10:再編後もなお残る課題は?

1:東証の市場再編とは何?

 東京証券取引所は2022年4月、現在の4市場(市場第一部、市場第二部、ジャスダック、マザーズ)から3市場(プライム市場、スタンダード市場、グロース市場)に区分を変える。

 プライムは「グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向け」、スタンダードは「公開された市場における投資対象として十分な流動性とガバナンス水準を備えた企業向け」、グロースは「高い成長可能性を有する企業向け」と位置づけている。大まかに言えば、現在の東証1部がプライムに、マザーズがグロースに、それ以外がスタンダードに引き継がれるイメージだ。

 13年1月に東京証券取引所グループと大阪証券取引所の経営統合で日本取引所グループ(JPX)が発足し、同年7月には両取引所の現物市場が統合した。時間の経過とともに、課題が明らかになってきたことから、18年10月に「市場構造の在り方等に関する懇談会」を設置。それ以降、東証や金融庁、有識者を中心として市場再編の検討が進められてきた経緯がある。

2:再編の狙いは?

 各市場のコンセプトや位置づけを明確にし、投資家が企業価値を見極めやすくすること。その結果として、国内外から幅広く投資マネーを呼び込むことだ。

 従来は1部以外のコンセプトの違いがわかりにくく、上場企業の多くが東証1部を目指してきた。例えば、1部への直接上場には時価総額250億円以上という基準があったが、2部やマザーズからは「時価総額40億円以上」など一定の条件を満たせば1部に昇格できた。このように2部やマザーズは「1部昇格への登竜門」といった考えを持つ企業も多く、市場区分が形骸化しているとの指摘があった。

 新規上場時に比べて、上場廃止の際の基準が緩いのも課題だった。企業価値向上の動機付けが不十分で「上場ゴール」と呼ばれる会社も少なくない。特に海外投資家からの投資が進まない要因の一つとなっていた。今回の再編では、プライムでは「流通時価総額100億円以上」とするなど、上場維持基準も実質的に引き上げる。

3:投資行動に影響するの?

 これまでTOPIX(東証株価指数)を投資対象とするETF(上場投資信託)など、指数に連動した投資商品を運用する「インデックス投資」を好む人が増えてきた。もし東証や金融庁の狙い通りに市場再編が機能して企業価値向上への動きが底上げされれば、こうしたインデックス投資にプラスとなる。波及的に、個別銘柄への投資(アクティブ投資)の裾野が広がる可能性はある。

 今回の市場再編では、TOPIXの見直しも予定されている。従来のTOPIXは東証1部に上場する全銘柄を対象に、1968年1月4日の時価総額を100として指数化したものだ。ただ、東証1部への上場企業数が増えるにつれて「市場を代表する銘柄で構成されているとはいえない」といった声が強まっていた。

 今後は「市場代表性に加え、投資対象としての機能性をさらに高める」(JPX)ことを目的に、市場関係者の意見を募りながら構成銘柄を選定していく。市場への影響などを考慮し、2022年10月~25年1月にかけて段階的に移行する計画だ。現在のTOPIX構成銘柄は全て継続採用するが、流通株式の時価総額が100億円未満の銘柄は最終的に除外する。

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