1ドル=140円の可能性

8:いつまで円安は続くのか

 この疑問は「ドル高はいつまで続くのか」と言い換えた方がよさそうだ。今回の円安の最も大きな原因は日米金利差の拡大である。従ってドル高基調が収束しない限り円安は続くと考えられる。

 米国はインフレ鎮静化に向けて利上げを進めているが、政策金利が利上げサイクルの到達点といわれる2%台半ばに差し掛かる頃が「ドル高の終わり」と見る市場関係者は多い。この頃になれば、米国の物価上昇率が鈍化し、景気後退リスクが意識されやすくなる。足元の政策金利は0.75~1%。あと何回の利上げで2%台半ばまで持っていくかによって、ドル高の終着点が見えてくるだろう。6月と7月、0.5%ずつの利上げは確実視されているため、秋口にはドル高が一服すると考えられる。

 11月には、米国の中間選挙も控えている。ここで与党民主党が敗北すると、米国政治が停滞するリスクの高まりが意識される。ここでドルが売られるシナリオもありそうだ。

9:1ドル=140円突破の可能性はあるか

 さらなる円安進行のカギを握るのが貿易収支の動向といわれている。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支の赤字は21年度、5兆3749億円と過去4番目の大きさとなった。これは、東日本大震災後に原発が稼働を停止しエネルギーの輸入が増えた14年度以来の水準だ。月ベースで見ても、22年4月まで9カ月連続の赤字となっている。輸入会社が支払いに充てるドルを調達するため、円を売る動きが大きいということだ。

 また輸入コストは円安のみならずエネルギー価格や食料価格の動向、部品調達などのサプライチェーンの制約度合いにも左右される。エネルギー調達において海外依存度の高い日本は、エネルギー価格が高くなると貿易赤字が膨らみやすい。「東日本大震災以降、原発再稼働に関する議論を先送りしたり、再生可能エネルギー導入を積極的に進めなかったりしたツケが出ている」と、ニッセイ基礎研究所の上野剛志・上席エコノミストは話す。

10:岸田政権の経済政策が円安要因との声もある

 岸田文雄政権が掲げる「新しい資本主義」の成長戦略と位置付けている政策が、円安につながるのではと指摘する声もある。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは、昨年度政府が設立した「大学ファンド」が外貨買い・円売りの要因になるのではと見る。大学ファンドは、世界トップレベルの研究力を目指す大学にその運用益を配分すべく設立された。すでに約5兆円が運用開始されており、将来的に総額10兆円規模のファンドになる予定だ。目標運用利回りは4%超となっているため、超低金利下の日本の円資産だけでは達成できない。資産の相当額を外貨に振り分ける必要がある。「片道切符の外貨買い・円売りとなるだろう」(植野氏)

 岸田政権が策定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で目玉に掲げる「資産所得倍増プラン」に関しても、個人マネーの海外流出につながる施策だと見る人が多い。家計に眠る2000兆円もの金融資産がリスクマネーと化し、日本の株式市場に向かうことを岸田政権は想定しているのだろうが、日本企業と日本経済の成長力が高まらなければ、個人マネーは相対的に利回りの高い外貨資産に向かってしまう。「円安が加速するリスクがある」とみずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは話す。

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