6月13日、円相場は一時1ドル=135円台前半と、1998年以来24年ぶりの安値を付けた。90年代初めにバブルが崩壊、その後金融機関などが相次いで破綻しデフレ経済へと日本が転落した時以来の円安ドル高水準だ。5月25日の1ドル=126円台から3週間で10円の円安となったことからも分かるように、円安のペースは加速している。一体何が起こっているのか。気になるポイントをまとめた。

- 1:円安が急速に進んだ理由は
- 2:次のFOMCの注目ポイントは
- 3:円が下げ止まるために必要な条件は
- 4:日銀はなぜ緩和政策をゆるめないのか
- 5:政府には円安への対応策があるのか
- 6:為替介入の可能性は
- 7:円キャリー取引は復活するか
- 8:いつまで円安は続くのか
- 9:1ドル=140円突破の可能性はあるか
- 10:岸田政権の経済政策が円安要因との声もある
1:円安が急速に進んだ理由は
円安基調が強まったのは、22年3月に米連邦準備制度理事会(FRB)が金利および量の両面から金融引き締め策を加速する姿勢を示したからだ。これを受け市場では日米の金利差が拡大するとの観測が広がった。円を売ってドルを買う動きが強まり、4月の約1カ月間で円相場は1ドル=118円台から129円台まで円安が進んだ。以降、円相場は一時的に1ドル=130円台に乗せる場面があるものの、1ドル=127~129円を推移する状態が続いていた。
潮目が変わったのが、6月10日の5月の米消費者物価指数(CPI)の発表だ。物価動向はFRBが金融引き締めのペースを判断する際の重要指標。40年ぶりの伸び率を記録した3月の前年同月比8.5%上昇から4月は同8.3%上昇だったため、市場では「インフレのピークは近いのでは」との予想が大半だった。結果は前年同月比8.6%上昇と、3月を上回った。前月比でも1%上昇となったため、市場の希望的観測は裏切られた。物価上昇が止まらない以上、米国はさらに強い金融引き締め策を実行するのが確実となった。
この「CPIショック」を受けて米長期金利は上昇。日米の金利差は拡大し、ドルを買う動きが強まった。円相場は1ドル134円台まで円安が進む。6月13日には一時1ドル=135円台前半まで下落し、98年10月以来、約24年ぶりの安値水準となった。

2:次のFOMCの注目ポイントは
米国では6月14、15日、金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)がある。すでに短期金利の指標となるフェデラルファンド(FF)レートを6月と7月に0.5%ずつ引き上げることが確実視されているが、市場では今回のFOMCで1994年以来となる0.75%の大幅利上げもあるのではとの声も出始めている。
最大の焦点が9月以降の利上げのペースだ。見極めに当たり重要となるのがFOMC終了直後に発表される将来の金利予想分布図(ドット・チャート)の平均値。これはいわばFOMCメンバーによる最新の経済見通しのようなもの。ここでインフレ予想が引き上げられると、市場はパウエルFRB議長のインフレ抑制スタンスの高まりを意識することとなる。
ドット・チャートの上方修正等があった場合、日米の金融政策の違いがより浮き彫りとなるため、円安が進む可能性が高そうだ。逆に現状維持だった場合は、円が買い戻される動きが出るだろう。
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