「個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本となりました」。3月13日からマスク着用に対する政府方針が変わるなど、新型コロナウイルス禍からの“正常化”が進みつつある。5月8日からの「5類移行」では一体、何が変わるのか。生活や働き方への影響など、押さえておきたい10のポイントをまとめた。
1:5類移行とは何?
2:そもそもどんな類型がある?
3:なぜこのタイミングで変わるのか?
4:濃厚接触の定義や、待機日数の考え方は?
5:感染有無の検査やワクチン接種の負担はどうなる?
6:マスク着用に対する考え方は変わる?
7:働き方に影響は出そう?
8:感染者が亡くなったときの対応は?
9:再び感染が急拡大しても分類は変わらない?
10:海外での行動制限やマスク着用の状況は?

1:5類移行とは何?
政府は5月8日から、感染症法における新型コロナウイルス感染症の位置づけを、季節性インフルエンザなどと同等の「5類」に見直した。医療提供体制などで特別対応を取っていたが、それらを通常の対応へと移していく。政府が全体の方針を1月に決定し、4月27日に厚生労働省が開いた厚生科学審議会(厚労相の諮問機関)の感染症部会で了承を得た。
これまでの経緯をたどると、政府はまず、2020年2月に新型コロナを「指定感染症」に分類。21年2月には、「新型インフルエンザ等感染症」に位置づけた。入院措置が強制的にできる点などが似ているため、一般に「2類相当」と表現されることもある。
今回、5類への移行に伴い、厚生労働省は一時、新型コロナの呼称を「コロナウイルス感染症2019(コロナ2019)」に変えることを検討していた。ただ、過度に警戒感が緩むのは望ましくないなどとして、結局「新型コロナウイルス感染症」を引き続き使うことを決めている。
2:そもそもどんな類型がある?
感染症法では感染力の強さや、症状の重さに応じて1~5類、さらに「新型インフルエンザ等」に分類している(下の表を参照)。政令で指定する「指定感染症」には、現在該当する感染症はない。
3:なぜこのタイミングで変わるのか?
厚生労働省によると、23年1月に5類移行の方針を打ち出した際、医療関係団体などから「一定の準備期間が必要だ」といった意見が上がっていたことが大きいという。
1月27日の厚生科学審議会感染症部会では、位置づけの変更について「速やかに行うことが望ましい」としつつ、国民の生活や企業、医療機関の取り組み、地方行政に大きな影響を及ぼすため「今後3カ月程度の準備期間を置いた上で行うべきだ」との指摘が出ていた。
4:濃厚接触の定義や、待機日数の考え方は?
濃厚接触者とは「新型コロナウイルスに感染していることが確認された人と近距離で接触、あるいは長時間接触し、感染の可能性が相対的に高くなっている人」(厚労省)。基本的には必要な感染予防策をせずに手で触れることや、対面で互いに手を伸ばしたら届く距離(1メートル程度以内)で15分以上接触があった場合を指す。
これまで、コロナ感染者は感染してから7日間、濃厚接触者は5日間、原則として外出自粛が求められてきた。5類移行後は、感染者に「5日間の療養が必要」との目安は示すが、それ以外に待機期間は求めない。
医療費は自己負担も
5:感染有無の検査や医療費、ワクチン接種の負担はどうなる?
現在、検査費用は公費支援しているが、5類移行後はそれを終了。自己負担しなければならない。ただ、重症化リスクが高い人が多い医療機関や、高齢者施設などで陽性者が出た場合は別だ。周囲の人々やそこで働く人々への集中的検査を継続していく方針を政府は示している。
医療費については「入院時」「外来時」ともに、患者の急激な負担増を避けるため、まずは9月末まで公費支援を続ける。入院医療費では高額療養費の自己負担限度額から2万円(2万円未満ならその額)を減額。コロナ治療薬の費用は高額に及ぶとして、全額を公費負担する。
ワクチン接種については、24年3月31日まで無料で受けられることが決まっている。それ以降の対応方針は今後検討していくという。
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