新型コロナウイルスの流行下で新たな生活習慣に合った働き方が模索される中で、議論が高まっている「選択的週休3日制」の導入。希望すれば勤務日数を従来の週5日から週4日に減らせるもので、自民党の1億総活躍推進本部が月内にもまとめる中間提言を受けて、政府も「骨太の方針」への反映などを検討する方針だ。勤務日数を減らすメリットやデメリットなど知っておきたい10項目を解説する。

(写真:PIXTA)
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1:週休3日制とはどういう制度?
2:なぜ今議論されているの?
3:そもそも日本の労働時間は長い?
4:メリットは?
5:デメリットは?
6:すでに導入している企業は?
7:導入企業は給与をどう支払っている?
8:年金や社会保障への影響は?
9:副業はできる?
10:課題は?

1:週休3日制とはどういう制度?

 多くの企業が週休2日制度や完全週休2日制度を設ける中、1週間あたりの休みを1日増やし、週休3日とする制度。従来週5日でこなしていた仕事を週4日ですることで、より多様な働き方が可能になるとされる。

 近年、導入する企業が増えており、4月5日には加藤勝信官房長官が記者会見で「選択的週休3日制」の導入について検討する考えを示した。ここでいう「選択的」とは、希望する人が週休3日で働けるということ。政府は6月にもまとめる「骨太の方針」に反映させることも含めて調整している。

2:なぜ今議論されているの?

 ワークライフバランスが重視されるようになり、育児や介護、自身の闘病などと仕事を両立させるために多様な働き方が選択できる必要性が高まっている。新型コロナウイルスの流行による業績悪化やクラスターの防止などの観点から、従業員の労働時間や出社日数を減らしたい会社の意向も一因となっている。

 少子高齢化で労働力不足がいよいよ現実となり、多様な人材を企業間がシェアしてビジネス力の低下を防ぐ必要が出ているという側面もある。

3:そもそも日本の労働時間は長い?

 かつて日本の労働時間は長いとされてきたが、経済協力開発機構(OECD)平均に比べて長かったのは2000年頃までだ。同機構のまとめによると19年の日本の全就業者の年間平均実労働時間は1644時間と85年比で2割減り、世界22位だ。1位のメキシコ(2137時間)、2位のコスタリカ(2060時間)、3位の韓国(1967時間)と比べると、決して多くはない。

 前述のようにワークライフバランスが重視されてきていることなどから、ここ数年でも他国に比べれば急速に減っており、G7の間では米国やイタリア、カナダよりもすでに低い水準にある。週休3日制の導入により、この水準がさらに下がる可能性がありそうだ。

4:メリットは?

 従業員にとっては、働き方の選択肢が増えることになる。子育てや介護などでこれまでであれば仕事を断念せざるをえなかった人も続けられるようになるほか、それ以外の人も家族と過ごす時間や趣味、仕事以外の勉強やイベント、セミナー参加、副業など新たな能力や感性を磨く時間にも使うことができる。しっかりと休み、リフレッシュして仕事に取り組めるため、画期的なアイデアが生まれ、イノベーションにつながる可能性もあるとされている。

 働き方改善に詳しい浜松ワークスタイルLab所長の沢渡あまね氏は、企業にとって人件費を抑えられるだけでなく、労働日数が減ることで「稼ぎ方を抜本的に変えデジタルシフトを進める大きな契機になる」と話す。採用面でも「ワークライフバランスの実現」や「プライベートの充実」が可能な会社として認知されることがプラスに働き、優秀な人材の確保やイノベーション創出にもつなげられる。また、従業員の満足度が高まることで離職率を抑える狙いもある。