3月19日、スイスの金融機関最大手UBSが同2位のクレディ・スイス・グループを買収すると発表した。スイスのベルセ大統領が記者会見を開いて「UBSによるクレディ・スイス(CS)買収が、市場で失われた信頼を回復するための、最善の解決策だ」と述べた。事実上のCSに対する救済だ。米国でもシリコンバレーバンク(SVB)が3月10日に破綻するなど、金融界で動揺が生じている。現状や今後の影響について改めて知っておきたいことを10項目にまとめた。(関連記事「UBSがクレディ・スイス買収、スキャンダル連鎖が招いた経営危機」)

1:なぜクレディ・スイス(CS)は買収されることになったのか。
2:そもそもクレディ・スイスとはどういう金融機関か。
3:著名漫画の「ゴルゴ13」に登場する「スイス銀行」には「安全」のイメージがあるが……。
4:救済買収が必要なほど業績や財務が悪化していたのか。
5:なぜ株式よりもリスクが低いはずの債券が、株式より先に価値ゼロになったのか。
6:今後のスケジュールは。
7:日本国内への直接的な影響は。
8:間接的な影響は。
9:個人投資家にとっての影響は。
10:金融危機は再来するのか。

(写真:ロイター)
(写真:ロイター)

1:なぜクレディ・スイス(CS)は買収されることになったのか。

 直接的にはCS自身の株価下落やCSからの預金流出が続いていたことが原因だが、それだけではない。「次はどこが危ないか」という心理が過度に広がってしまうと、他の多くの金融機関にも預金流出などの形で悪影響が波及する懸念があったためだ。金融システム全体への影響を抑えるための対応と言える。実際、買収が決まった直後にはイエレン米財務長官とパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が「金融の安定を支援するための発表を歓迎する」と共同声明を出した。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁や英イングランド銀行(中央銀行、BOE)も同日に同趣旨の声明を出した。「ユーロ圏の銀行は強固な資本と流動性を備えている」(ラガルド総裁)と指摘するなど、いわゆる火消しに動いていることがうかがえる。

2:そもそもクレディ・スイスとはどういう金融機関か。

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