2021年4月1日から商品やサービスの価格について消費税を含めた「総額表示」が義務化される。「ユニクロ全商品約9%値下げ、本体価格をまんま『税込み価格』に」にあるように、ファーストリテイリングは傘下のユニクロなどで現在表示している税抜きの本体価格をそのまま税込み価格とし、実質的に値下げして対応。そのほかの企業も対応に追われる。店舗や通信販売での価格表示が大幅に変わる今回の義務化で知っておきたい変更点など10項目をまとめた。
1:総額表示とは?
2:義務化はいつから?
3:どうして今までは総額表示ではなかった?
4:どんな表示ならセーフ?
5:どんな表示はアウト?
6:罰則は?
7:例外となる事例は?
8:企業の対応は?
9:テークアウトで税率が変わる外食はどうすべきか?
10:「100円ショップ」などの店名は変更しないといけない?
1 総額表示とは?
国税庁はホームぺージのタックスアンサー(よくある税の質問)で、「消費者に商品の販売やサービスの提供を行う課税業者が、値札やチラシなどにおいて、あらかじめその取引価格を表示する際に、消費税額を含めた価格を表示すること」と説明している。
対象は、商品本体による表示(商品に添付または貼付される値札等)、店頭における表示、チラシ広告、新聞・テレビでの広告など。「消費者に対して行われる価格表示であれば、それがどのような表示媒体により行われるものであるかを問わず」としている。つまり、店頭やチラシ、通販サイトなどで価格表示をする際に、税込み価格を表示しなければ違法となる。
これは消費税法第63条によるもので、財務省は「消費者が値札や広告により商品・サービスの選択や購入をする際に、支払金額である『消費税額を含む価格』を一目で分かるようにし、価格の比較も容易にできるようにするため」としている。
2 義務化はいつから?
2021年4月1日から義務化される。
3 どうして今までは総額表示ではなかった?
総額表示義務は消費税法改正により04年4月から実施されている。ただ、消費税率は14年4月1日に5%から8%へ、19年10月1日に10%へと引き上げられた。国は「2度にわたる消費税率の引き上げに際し、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保、事業者による値札の貼り替えなどの事務負担に配慮する観点」から13年10月1日に消費税転嫁対策特別措置法を施行。18年9月30日までの間、「表示する価格が税込み価格であると誤認されないための措置」が講じられていれば、税込み価格を表示することを必要としないとしていた。その後、16年11月の税制改正で、特措法の適用期限は21年3月31日までに延長された。
4 どんな表示ならセーフ?
財務省が公開している資料では、例えば税込み価格10780円の商品の場合、「10780円」「10780円(税込)」「10780円(うち税980円)」などが総額表示に該当すると説明している。
また、「10780円(税抜価格9800円)」「10780円(税抜価格9800円、税980円)」「9800円(税込10780円)」のように、税込み価格が明瞭に表示されていれば消費税額や税抜き価格を併せて表示することができるとしている。
5 どんな表示はアウト?
財務省の資料では、同じく税込み価格10780円の商品の場合、「9800円(税抜)」「9800円(本体価格)」「9800円+税」のように、税込み価格を明示していない場合は、総額表示に該当しないとしている。
また、総額表示の文字サイズが税抜き価格と比べて極端に小さく記載されていたり、色がかけられて見えにくかったりするなど、消費者に誤認させるような表示は違反となるという。
6 罰則は?
消費税法63条によって総額表示が義務付けられているものの、現時点で罰則規定はない。ただ、消費者庁表示対策課によると「税抜き価格を表示しておきながら、あたかも総額表示と消費者に誤認させるような表示をさせている場合は景品表示法が禁止する有利誤認に当たる可能性はある」。消費者庁は景表法違反に対して、誤認の排除や再発防止策の策定を求める措置命令や課徴金納付命令を出せる。
7 例外となる事例は?
総額表示の義務付けの対象は、不特定多数の消費者に対する値札や店内掲示、チラシ、商品カタログであらかじめ価格を表示する場合を対象としており、見積書や契約書、請求書などは対象とはならない。
また、商品本体のパッケージや下札などに税抜き価格が表示されている場合でも、棚札やポップなどで商品の税込み価格などが一目で分かるようになっていれば問題ないとしている。インターネットやカタログを使った通信販売では、ウェブサイトやカタログで税込み価格が表示されていれば、送付された商品に税抜き価格のみが記されていても問題はないという。
8 企業の対応は?
「ユニクロ全商品約9%値下げ、本体価格をまんま『税込み価格』に」にあるように、ファーストリテイリング傘下のユニクロやジーユーは、3月12日から価格を一律約9.1%値下げ。同日から総額表示に切り替えるものの、税込み価格をこれまでの税抜き価格と同額にすることで表示価格の変更を避ける。
一方、「ZARA」や「GAP」などは既に総額表示に切り替え済み。しまむらは、現在は税別表示をしているが、4月1日以降は本体価格と税込み価格を併記することで対応する。年明けから徐々に併記対応してきたといい「19年の消費税増税時に増税分を自社で吸収し販売価格を据え置いたため、今回は値下げするようなことはしない」としている。西松屋は現在は本体価格を表示しており、4月1日以降の表示については現在検討中だという。
ビックカメラは「税率変更時に総額表示に切り替え済み」とするなど、家電量販店の多くも対応を済ませている。
外食では「長崎ちゃんぽん」を展開するリンガーハットが3月1日にメニューの価格を総額表示に切り替えた。変更に際して、長崎ちゃんぽんの価格を従来の税込み価格649円(東日本エリア)から650円にするなど、一部商品の1円単位の端数を切り上げた。釣り銭の受け渡しで小銭を減らし、新型コロナウイルス禍で人の接触を減らす効果もあるとしている。
9 テークアウトで税率が変わる外食はどうすべきか?
コロナ禍でテークアウトを始めた外食店も多い。店内で食べるイートインでは税率は10%だが、テークアウトは軽減税率が適用されるため8%となり消費税込みの総額は異なる。ただ、財務省によると「カレー880円(店内飲食)/868円(テークアウト)」のように、イートイン、テークアウトそれぞれの価格を表示する必要はないという。たとえば、イートインコーナーを設けているコンビニであっても消費税率8%の総額表示のみでもよく、テークアウトを行っているレストランであっても消費税率10%の総額表示のみでよい。
10 「100円ショップ」などの店名は変更しないといけない?
「100円ショップ」など店の名称(屋号)と考えられるものは総額表示の対象とはならない。ただし店内における価格表示は、消費税額を含んだ総額を表示する必要がある。「1万円均一セール」といった販売促進イベントなどの名称も同様で、店内での価格表示は総額表示にしなければならない。
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