大国が「拒否権」発動すると無力
4:拒否権とは?
安保理の決議は常任理事国5カ国を含む理事国9カ国以上の賛成投票によって採択される。常任理事国5カ国の賛成が必須なのは、この5カ国には「拒否権」が与えられているからだ。拒否権を持つ常任理事国が1カ国でも反対をすれば、その決議は採択されないというルールになっている。
2月25日に開かれた安保理の会合では、ウクライナに侵攻したロシアを非難し、ロシア軍の即時撤退を求める決議案が採決にかけられた。15の理事国のうち11カ国が賛成したが、拒否権を持つロシアが反対したため採択に至らなかった。
24日にはウクライナ情勢をめぐって安保理の緊急会合が開かれていたが、その最中にロシアによる侵攻が始まった。国連のグテーレス事務総長は目に涙を浮かべながら、「今世紀最悪になる可能性がある戦争を欧州で始めてはならない」とロシアのプーチン大統領に訴えかけた。国連の安保理は、拒否権を持つ大国の暴走に対して無力であることが改めて浮き彫りになった。
5:日本は常任理事国になれない?
日本はこれまで11回、非常任理事国になっている。17年には22年安保理非常任理事国選挙(任期は23年から24年まで)への立候補も発表している。ただ3で触れたような規定があるため、常任理事国にはなれない。国内外には「日本は安保理の常任理事国になるべきだ」との意見がある一方、反対意見もある。日本、ドイツ、インド、ブラジルの4カ国は、連携して国連安保理での常任理事国入りを目指そうとしたこともあるが、進展しなかった。
6:なぜ中国、インドなどは安保理決議で投票を棄権したのか?
拒否権を行使し、反対票を投じたロシア以外では、中国とインド、UAEが投票自体を棄権した。中国の張軍国連大使は「火に油を注ぐことにならないよう、会議の対応には注意を払うべきだ」と話した。中国の習近平国家主席は2月4日にプーチン大統領と会談を行い、そこでは北大西洋条約機構(NATO)のさらなる拡大に反対する共同声明を発表している。そのため中国は今回のウクライナ侵攻についても一定の理解を示したとみられている。インドはロシアから毎年多くの武器を輸入をしているという事情があり、2国間の関係を踏まえて棄権したという見方もある。
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