自動車部品大手のマレリ(旧カルソニックカンセイ)が、主要取引先の日産自動車や大手金融機関に支援を要請していることが分かった。自動車の生産減少で急速に業績が悪化していた。経営再建に向け、私的整理の一種である事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)の活用も検討している。マレリとはどんな企業で、どこへ向かうのか、10のポイントをまとめた。

マレリは旧カルソニックカンセイが欧州の旧マニエッティ・マレリと経営統合して2019年に発足した(写真:ロイター/アフロ)
マレリは旧カルソニックカンセイが欧州の旧マニエッティ・マレリと経営統合して2019年に発足した(写真:ロイター/アフロ)

1:マレリってどんな会社?
2:どんなものを作っているの?
3:電気自動車(EV)シフトへの対応は?
4:マレリの最近の業績は?
5:なぜ業績が悪化したの?
6:日産との関係は?
7:日産は業績が上向いている。マレリ支援に動くのか?
8:マレリが申請を検討するADRとは?
9:ADRによって再生を図った企業の事例は?
10:自動車部品メーカーの経営悪化は連鎖しないか?

1:マレリってどんな会社?

 日産自動車系の自動車部品大手だったカルソニックカンセイが、欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(現・欧州ステランティス)の自動車部品部門だったマニエッティ・マレリを約7200億円で買収。その後の経営統合で2019年に誕生したのがマレリだ。

 日本をはじめとするアジア、米州、欧州、アフリカなど世界各地に約170カ所の事業拠点や研究開発施設を構え、全世界に約5万4000人の従業員を擁する。20年12月期の連結売上高は約1兆2660億円だった。デンソー(4兆9367億円、21年3月期)の約4分の1の規模だ。

 旧カルソニックカンセイは、「日産の御三家」と呼ばれたカルソニックとカンセイが00年に合併によってできた会社だ。経営危機に陥っていた日産にルノーから送り込まれたカルロス・ゴーン氏がリストラの大なたを振るい、「系列解体」を断行したのが契機となった。

 日産の連結子会社として重要なサプライヤーだったが、17年に米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に売却され、日産との資本関係はなくなった。その後、KKRが主導してマニエッティ・マレリを買収し、世界的に知名度の高い「マレリ」へ社名を変更した。

2:どんなものを作っているの?

 カルソニックのカーエアコン機器、カンセイのメーター機器といった強みを生かし、運転席周辺のモジュール製品を開発した。現在も旧カルソニックカンセイが得意とした、このコックピットモジュールと呼ばれる部品や空調システム、熱交換器などを中心に、電子・電装部品やエンジン関連部品など幅広い製品を手掛ける。

 上場廃止になる前の16年6月に旧カルソニックカンセイが開示した資料によると、その時点で同社の事業に占める日産向けの売上比率は84%にも達していた。マニエッティ・マレリとの経営統合でこの比率は下がったとみられるが、依然、日産への依存度は高い。