5:列車は走らなくなるの?

 西武鉄道や東急によると、実は列車自体はダイヤ通りに走り続けるが「客を乗せずに回送列車にする」という。

 列車のダイヤは、車両の運用や乗務員の勤務スケジュールと密接に絡み合っており、1本だけを運休すればいいというものではない。終電の場合、終着駅に到着した後、翌朝の一番電車になることが多い。乗務員も待機所で仮眠して、翌日の乗務に備える。そのため、終電だけ走らせないという対応は難しいという。

 各社は緊急事態宣言の発出を受け、3月に予定しているダイヤ改正の前倒しでの実施も検討した。しかし、すでに決まっている車両の運用や乗務員の勤務スケジュールを変更するのは手間がかかりすぎると判断した。このためダイヤそのものは変更せず、終電に近い列車の営業運転だけを取りやめることにした。

6:鉄道会社にとってのメリットは?

 ある私鉄関係者は「各社との調整や、乗客への告知などの手間がかかるだけで、我々にメリットはない」と話す。運休となった列車も、客を乗せずに走らせるので、乗務員を休ませるわけにいかない。SMBC日興証券の川嶋宏樹シニアアナリストは「駅の営業時間は少し短くできるだろうが、当直勤務なのでコスト削減効果はほぼない」と話す。

 とはいえ、国交省や自治体からの終電繰り上げ要請は重い。深夜の外出自粛を実効性あるものにするために、対応せざるを得なかったのが実情だ。

7:首都圏以外には波及しないの?

 13日に緊急事態宣言の対象地域に追加された大阪府、京都府、兵庫県に路線を持つJR西日本は「今のところ、終電繰り上げの予定はない」としている。自治体からの要請がないためで、今後要請が出た場合は対応を検討するという。

8:3月に予定されているダイヤ改正との違いは?

 3月のダイヤ改正による終電繰り上げは、より大規模なものになる。JR東日本の場合、対象線区は東京駅から100㎞圏の17線区に及ぶ。終着駅に午前1時前に到着するよう、最大30分程度、最終電車の時間が繰り上がる。車両の運用や乗務員の勤務スケジュールが変わることで、翌朝の一番電車が遅くなる路線も5線区ある。

 接続する首都圏の私鉄各線も、JRに合わせて終電を繰り上げる。また首都圏だけでなく、関西圏のJR西日本の12線区と一部の私鉄も終電繰り上げに踏み切る。その他の地域でも、利用者の減少に合わせて夜間の運行本数を減らす路線がある。

 3月のダイヤ改正の主な目的はコロナによる乗客減に対応することだけでなく、夜間に運行を休止する時間を拡大することで、保線工事を効率化する狙いがある。JR東日本によると、保守作業員のなり手が減っており、作業員数はここ10年で2割ほど減少。今後10年でも1~2割の減少が避けられないという。一方、ホームドアの設置やバリアフリー対応などの工事で、作業量は過去10年で約1割増えている。

 人手に頼らない機械化を進めているが、大型機械を現場まで運ぶ時間が必要になる。現状では終電から翌朝の一番電車まで3時間20分ほどの時間があるが、実作業時間は2時間20分ほどしかないという。ダイヤ改正により電車の運行が止まる時間は4時間程度に増え、機械化がより進めやすくなる。JRに続いて、私鉄各社も相次いで終電繰り上げを決めた背景には、こうしたメリットが見込めることがあった。

9:3月以降の終電繰り上げで注意すべきことは?

 日々の利用だけでなく、出張の際に要注意。23時45分ごろに到着する最終の新幹線から、これまでのように乗り継げなくなる区間が出てくる。首都圏では東北・上越・北陸新幹線の最終列車から、東海道線の小田原や横須賀線の鎌倉、逗子などへたどり着けなくなる。東海道新幹線からは青梅線沿線、横須賀線の久里浜、常磐線の取手などへは行けなくなる。

10:再び終電が遅くなる可能性はある?

 最初に終電繰り上げを打ち出したJR西日本は、実はコロナ禍より前の19年から検討を進めていた。働き方改革により帰宅時間が早まり、深夜帯の利用は以前から減少傾向にあった。関西圏の13年と19年の利用客数を比較すると、17時台が14%増、18時台が12%増なのに対し、22時台は4%減、23時台は9%減、0時台は15%減だったという。

 山手線の終電付近の利用客数は19年と比べてさらに40%減少。東急東横線や田園都市線は50%近く減っている。「これだけ利用が減少すれば、社会的な理解を得られる」(関係者)と踏んだわけだ。

 働き方改革の流れはコロナで一層加速し、保線作業員の人手不足も解消する見込みはない。そう考えると、今後再び終電が遅くなる方向性は見出しにくいのが現実だろう。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「10 Questions」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。