新型コロナウイルスを封じ込めた中国は目下、世界経済で一人勝ち。背後にあるのは経済への影響を極小化する、緻密な感染制御システムだ。コロナ禍を経て中国が深めた自信は、今後の世界経済の行方にどう作用していくのか。

 「健康コードへの複数国の参加を望む」。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は11月21日にオンラインで開かれたG20(主要20カ国・地域)サミットでこう呼びかけ、「人々の秩序ある往来に便宜を図るべきだ」と続けた。

習近平国家主席は、中国こそが感染症封じ込めの「方程式」を確立したのだという自信をみせる(写真:共同通信)
習近平国家主席は、中国こそが感染症封じ込めの「方程式」を確立したのだという自信をみせる(写真:共同通信)

 新型コロナウイルスの流行を契機に開発された健康コードは、今や中国の感染症対策にとって欠かせない存在になった。個人の移動履歴や健康状態報告など各種データベースから抽出した情報を基に、ウィーチャット(微信)やアリペイ(支付宝)を使ってQRコードをスマホ画面上に表示する。感染の危険が高ければQRコードの色が赤、安全と思われる場合は緑といった具合に色分けされるため、一目で状態が判別できる。

新型コロナの流行を契機に開発された「健康コード」
新型コロナの流行を契機に開発された「健康コード」

 感染リスクの高い人をわかりやすく確認できることから、官公庁や空港などの公共施設に入る際に提示を要求されることが多い。ホテルのチェックインの際には、携帯電話の基地局情報から移動履歴を表示する「通信ビッグデータ行程カード」の提示を合わせて求められることも増えた。

 国家が網羅的に個人情報を把握できる中国だからこそ、一気に普及させることができたデジタル管理の仕組みだ。自由と人権を重視する西側諸国が、その呼びかけに安易に応じることは考えにくい。だが、習主席の言葉からは中国こそが感染症封じ込めの「方程式」を確立したのだという自信がにじみ出ている。

 中国の2020年7~9月の国内総生産(GDP)は物価変動の影響を除いた実質で前年同期比4.9%増。他国に先駆けて回復していることが鮮明だ。10月の経済指標でも個人消費や工業生産、投資が堅調だ。最初にコロナの感染爆発が起きた国でありながら、その後ほぼ市中感染ゼロを実現して経済を回復軌道に乗せた中国。武漢市を封鎖した大混乱のイメージが残るが、現在の感染制御は想像以上に緻密になっている。

想定外感染も影響極小化

 11月9日、上海市東部にある浦東国際空港で貨物の搬送作業に当たる50代男性の感染が確認されたというニュースが中国全土を駆け巡った。海外からの入国者の感染例が見つかるのは今や日常茶飯事だが、入国者全員に検査と隔離を義務付けるなど水際作戦が機能している。今回の感染例が深刻視されたのは、渡航者との接触機会がない人が感染したためだ。

 中国経済の中心で人の往来も盛んな上海市内で感染が広がれば、中国全土への影響は避けられない。上海で4カ月ぶりとなる国内症例の出現に緊張感が高まった。

 すぐさま男性が住む浦東新区祝橋鎮の営前村は封鎖され、住民が村の外に出られなくなった。感染した男性の家族や同僚など26人の濃厚接触者は、10日未明までにPCR検査を受け全員の陰性が確認された。中国は現在、感染が判明した人の濃厚接触者と、その濃厚接触者を隔離対象としている。

 営前村の住民や男性が所属する会社関係者など約9000人にPCR検査が実施され、全員の陰性が確認された。それでも移動制限を敷いたのは、検査で陰性となっても14日程度の間に陰性から陽性に転じるケースが珍しくないからだ。

 翌10日、コロナは安徽省阜陽市潁上県に飛び火した。安徽省の自宅に帰っていた感染者の同僚男性が、感染していたことが確認されたのだ。この男性の濃厚接触者にもPCR検査が実施され、居住地域は移動制限の対象になった。その後の調査で2人の感染者はマスクを着用せずに北米から到着したコンテナ内の清掃を行っていたとされ、モノからヒトへの感染事例ではないかという見方が強まっている。

続きを読む 2/2 最も費用対効果の高い対策を模索

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1669文字 / 全文3737文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題