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 新型コロナウイルスの感染拡大の状況やその対策は、地域ごとに大きく異なる。日経ビジネスの海外支局が、お互いに他地域へ疑問や質問を投げかけてみた。このQ&Aシリーズの初回は欧州。移動の自由や移民を含めた国民の生活が、新型コロナの感染拡大でどのような影響を受けているのかを中心に回答する。

 欧州編の本編「『自由の代償』で景気は2番底へ、欧州域内の格差拡大も」はこちら

3月、ドイツの警察はフランスからの入国をチェックしていた。6月以降は制限が解除され、シェンゲン協定加盟国間の往来について基本的に入国検査はされていない(写真:AP/アフロ)

Q1:欧州には移民が多い。感染対策や生活環境はどうなっているのか。

A1:残念ながら移民のコミュニティーが感染源になっているとの指摘は多い。理由はいくつかある。まず、スーパーや飲食店の店員、介護士など感染リスクの高い職場で働く人々が多い。情報収集や現地語の理解が不十分で、感染症に関する情報を理解していないケースもあるようだ。

 スウェーデンのヨーテボリ大学政治学部のジョン・ピエール教授は「言語の問題などから移民が政府の勧告を十分に理解できず、感染拡大が起きてしまっているようだ」と指摘する。10月まで1日当たりの感染者数が少なかったスウェーデンも11月に入り、感染者が増加している。

 欧州ではロンドン、パリ、マドリード、ミラノなど大都市で感染者や死者が多い。その一因として移民の人口比率が高い地区があり、十分な医療を受けられないこともあり、感染拡大が起きている点が挙げられている。英統計局の3初旬~7月下旬までの調査によると、人種ごとの新型コロナ関連死者数はアフリカ系黒人が10万人当たり250人と最多で、白人の2.5倍だった。英国で生まれ育った黒人もいるが、移民として他国から英国に移り住んだ黒人も多いとみられる。

 一方、欧州ではアジア人に対する差別も広がっている。新型コロナの発生源とされる中国に対する反感から、容姿の似ているアジア人に対する差別的な発言や暴行が報告されている。フランスでは10月下旬からアジア人に対する差別的行為を呼びかける投稿がSNS(交流サイト)で拡散しており、警戒感が高まっている。

欧州各国が独自に感染拡大エリアを認定

Q2:EU域内では入国審査なしで移動できる。国境でどのように感染対策をしているのか。

A2:欧州は地続きで国が隣接するため、国境を越えた往来が感染対策上の課題になっている。春の第1波では死者数が急増した際に、ドイツなど各国が国境の往来を制限した。

 ただ、これは一時的な緊急措置で、基本的にはシェンゲン協定という大きな枠組みで国境管理をしている。同協定には欧州26カ国が加盟し、域内をパスポートなしで移動できる。新型コロナ対策でもシェンゲン協定で出入国を管理することが多い。欧州連合(EU)はシェンゲン協定をベースに、出入国制限と解除の方針を定め、各国がそれを参考に判断している。なお、英国はシェンゲン協定に加盟していないが、感染対策の大きな枠組みでは欧州内の一部に組み入れられることが多い。

 夏以降は、欧州各国が独自に感染拡大エリアを認定し、それに応じて出入国の制限や自主隔離を国民に求めている。ただシェンゲン協定加盟国のエリア内では入国審査はないので、政府が人の往来をチェックすることは難しく、国民の自主性に委ねられている側面がある。英国はシェンゲン協定に加盟していないため、入国審査ができ、感染拡大エリアからの入国者には自主隔離を求めやすい。