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経済1割縮小の構造問題

 長引く規制は欧州の街並みを変えつつある。商店街では、空き店舗や店舗の入れ替えが目立つ。ロックダウンなどの規制強化で売り上げが激減し、家賃支払いなどの負担で事業継続が難しくなった店が多いためだ。ピザやすしなどの飲食チェーン大手も多くの店舗を閉鎖している。

 GDPに占める飲食や不動産などサービス業の比率が高いスペインや英国、イタリア、フランスは、厳しい規制が経済に大きなダメージを与えている。欧州委員会によると、2020年のGDPはスペインが前年比12.4%減、英国が同10.3%減、イタリアが同9.9%減、フランスが同9.4%減だ。欧州主要国の経済が約1割縮小することになる。

 各国は第1波を乗り越えた後に経済のV字回復を狙っていたが、コロナ感染の再拡大により景気の2番底に陥る可能性が高まっている。欧州委員会は10〜12月期のユーロ圏の実質成長率を前期比マイナス0.1%に下方修正した。

 その一方で、欧州の中にもGDPの縮小幅が比較的小さい国もある。欧州委の20年の予測によると、スウェーデンが前年比3.4%減、デンマークが同3.9%減だ。様々な要因が考えられるが、1つの要因は、コロナ禍においても世界で需要の拡大するデジタル分野に強みを持つことだ。

 スイスのビジネススクールIMDによる2020年の世界デジタル競争力のランキングで、デンマークは3位、スウェーデンは4位に入っている。それに対してスペインは33位、イタリアは42位で、デジタル競争力において欧州内で「南北格差」がある。

欧州経済を支える中国

 実際、スウェーデンやデンマークには、デジタル分野の成長企業がある。スウェーデンでは音楽配信大手スポティファイの時価総額が5兆円に達し、フィンテック企業のクラーナは9月に追加出資を受け、企業評価額が106億ドル(約1兆1100億円)になった。デンマークでは政府向けITシステムのKMDが育ち、NECが19年に80億デンマーク・クローネ(約1440億円)で買収した。

 デジタルなど新分野で強い企業を育成できないと、コロナ禍では成長ドライバーを探しにくい。欧州が米国や中国、アジアという地域に比べてGDPの縮小幅が大きいのは、主要国で成長企業が少ないことと無関係ではないだろう。長引くコロナ禍は、産業の新陳代謝が少ないという欧州の構造問題を改めて浮かび上がらせている。

 こうした状況の中で、欧州経済を支えているのは中国だ。欧州主要国は中国が最大の貿易相手国であり、その需要が欧州の製造業のけん引役になっている。特にドイツでその傾向が顕著であり、自動車各社の業績が回復している。

 ドイツのフォルクスワーゲン(VW)とダイムラー 、BMWの3社は、20年4~6月期は最終赤字だったものの、7~9月期は最終黒字に転換。3社ともに中国での販売増が業績回復に貢献した。特にダイムラーとBMWの7~9月期の最終利益は、前年同期を上回るほど好調だった。堅調な製造業が下支えになり、ドイツの20年のGDP見通しは前年比5.6減と他の欧州主要国より減少幅が小さい。

 欧州はデジタルや環境関連などで自力を高めようとしているが、その育成には時間がかかる。当面は中国と政治的な緊張感を持ちながらも、経済的には強いつながりを保つという難しい関係を構築することが不可欠になっている。

欧州に「クリスマス」は来るか

 暗いニュースが多い欧州で今、人々の大きな関心はクリスマスを家族で過ごせるのか否かという点に集まっている。

 ジョンソン英首相は2回目のロックダウンを導入する際に、「今年のクリスマスは例年とは様子が違うものになる。けれども現時点(11月初旬)で厳しい行動を取ることで国中の家族が再会できるよう、私は心から願っている」と話した。

 仮に感染拡大が抑えられたとしても、例年のように大人数が集まりクリスマスシーズンを過ごせば、再び感染が拡大局面に入るのは避けがたい。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、「第1波が収束したときに、当然のこととして規制を若干緩和したが、おそらくそれが早すぎたのだろう」とドイツメディアに反省の弁を述べている。今のロックダウンや様々な規制をどのように解除していくかが、今後の感染拡大を防ぐ大きなポイントになりそうだ。