新型コロナの世界的感染が始まって初めての本格的な冬を迎える。感染再拡大で再ロックダウンなどに見舞われる国がある一方で、成長率がプラスに転じて成長軌道に戻った中国のような国もある。各国とも復興への道を模索するが、むしろ地域間、国家間における格差がコントラストを強めている。世界のコロナ禍の最前線を追う。
1日当たりの新規感染者数が、第1波の約8倍に達している欧州から見てみよう。
欧州が新型コロナウイルス感染の再拡大に苦しんでいる。世界保健機関(WHO)によると、欧州(ロシア含む)の1日当たりの新規感染者数は11月8日で33万人を超えた。検査数が増加していることがあるが、第1波のピーク時に比べおよそ8倍に達している。

特に感染者が多いのは、フランス、英国、イタリア、スペインで、ベルギーやチェコは人口当たりの感染者数が多い。こうした国々では、春に続き2回目の都市封鎖(ロックダウン)を実施している。
なぜ、爆発的に感染が再拡大しているのだろうか。主な要因として挙げられるのが、「ロックダウンの反動」「バカンス」「学校再開」だ。
欧州を包んだ高揚感
第1波のロックダウンが明けた8月。英国は落ち込んだ経済を立て直すために、レストランで割引を受けられるキャンペーンを実施した。日本政府が外食需要喚起策「Go To イート」の参考にしたキャンペーンだ。英国では毎週月~水曜、計13日間で1億食以上に利用され、需要が激減していた飲食店に活気が戻り、予約がなかなか取れないほどの混雑だった。
アルコールは割引の対象外だったがパブもにぎわい、ロンドン中心地のパブは人いきれでむせかえるような混雑だった。繁華街では、若者たちが密集して歓談していた。
英国では春の厳しいロックダウンが解除された後に、人々がこぞって家の外に飛び出した。夏の陽気と相まって街全体が高揚感に包まれていた。大げさに聞こえるかもしれないが、2カ月近くも外出を制限される生活は精神的ストレスが大きく、人々の表情は解放感に満ちていた。
バカンスでも人々が交流し、感染が拡大した。欧州の人々にとって夏のバカンスは冬のクリスマスと双璧を成す楽しいイベントだ。外出制限の鬱憤を晴らすように人々はこぞってバカンスに出かけた。
追い打ちをかけたのは、学校の再開だ。9月は欧州の新学期の始まりである。春のロックダウン以降、閉鎖されていた学校が多く、多数の若者たちが友人との再会を喜んだ。大学では新入生がキャンパスに押しかけ、夜には新入生歓迎のパーティーが開催された。
こうした状況下において、感染の再拡大は避けられなかった。ロックダウンで自由を抑圧された分、その反動は大きくなる。人々がロックダウン明けに移動や交流などの自由を謳歌し、それが感染拡大の温床になるという悪循環に陥っている。それはまるで、欧州の人々が自由の代償を払っているかのようだ。
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