個人投資家の関心が高い株主優待を導入する企業の数が10年ぶりに減少に転じた。野村インベスター・リレーションズ(NIR)の調べによると、株主優待を実施している企業の数は9月時点で1524社。2019年実績は1532社で10年ぶりにその数が減っている。もちろん新型コロナウイルスの影響による業績悪化で株主優待どころではなくなったという企業があるのは否めない。前回、実施企業が減少した2009年、2010年もリーマン・ショックによる世界的な景気悪化が影響したからだ。

「株主平等の原則に反する」という機関投資家の指摘を気にかける企業が増えた(写真:PIXTA)

 だが足元の減少はそれ以外の要素も含まれている。NIRの調べによると、優待を廃止した企業のうち「公平な利益還元」を理由とする企業の割合が19年度は4割弱、20年度も4割と急増している。これまでにはみられなかった動きだ。ちなみに優待廃止が増えた08年度に公平な利益還元を廃止理由にした企業は15%。09年度も2割にとどまる。

 なぜだろうか。理由は明白だ。資本市場ときちんと向き合う上場企業が増えた結果、「株主平等の原則に反する」という機関投資家からの指摘を気にする企業が多くなったからだ。連載1回目、2回目で紹介してきたように、株主優待は基本的に機関投資家にほとんどメリットがない。それどころかコスト増というマイナス要因すら発生する。個人投資家が大きな恩恵を受けるのと対照的だ。ほとんどすべての機関投資家が「株主優待にかける費用を配当に回してほしい」と思っているのは間違いない。

 車や駐車場、住宅関連などさまざまなトラブル解決のソリューションを提供するプレステージ・インターナショナルは10月、株主優待制度を廃止すると発表した。導入からわずか2年での廃止だ。導入時点でも、「社外取締役のメンバーだった機関投資家からは、そんなことをするなら配当をすればいい、というスタンスを感じた」(中山克哉常務執行役員)が、グループ会社が運営するモールでのオンラインクーポン贈呈という株主優待ならば、低コストな上、販売増にも期待できるとして導入に踏み切った。

 だが、ふたを開けると欲しい商品がない、使い勝手が悪いなど評判は今一つ。機関投資家の否定的な意見を押し切ってでもやるメリットが薄いと判断し、さっさと取りやめることを決めた。

 9月に優待廃止を発表した第一稀元素化学工業も、制度を導入したのは2017年と比較的最近だ。ジルコニア粉末を自動車の排ガス浄化触媒向けに供給するなどBtoBビジネスのため知名度が低く、株主も従業員やOBがほとんど。そのため知名度向上や中長期的に会社を応援してくれる株主の育成を狙って1単元(100株)以上を保有する株主に一律でクオカード2000円を送るという優待を導入した。

 優待開始後、それまで1000人台だった株主数は今年3月末で2万7502人と激増し知名度という点での効果はてきめんだった。しかし、しょせんは優待狙いで「事業自体の魅力を知ってもらい、中長期に株を持ってもらうという当初の目的を達成できていない」(経営企画部)。コストパフォーマンスのいい1単元株主が多く「すべての株主への利益還元の公平性を向上させたほうがいいのでは」(同)と議論した結果、廃止を決めた。ポンプの製造販売を手掛けるポエックのように、公平な利益還元のために優待を休止して配当を従来予想より増やした企業もある。

続きを読む 2/2 株価の下方硬直性