読者の皆さんは深圳・華強北の現状をご存じだろうか?新型コロナウイルスの感染拡大によって往来が著しく減少し情報が減ったことも手伝って、いまだにドローンが飛び交うチャイナテック・スタートアップの街のイメージをお持ちの方も多くいらっしゃると思う。しかしそれはもう、この街にとって過去でしかない。今の華強北の看板商品は「輸入化粧品」である。日本人の知らない間に街の様子は大きく変わっているのだ。

 深圳は「非モテ男子」の街でもある。深圳市総人口約1250万のうち男性が680万弱と約55%を占め、そもそもバランスが大きく崩れている。そのうえ、ある調査によれば77.23%にパートナーがいないという。

華強北は世界最大の電気街といわれてきた(写真:ロイター/アフロ)
華強北は世界最大の電気街といわれてきた(写真:ロイター/アフロ)

 その非モテ男子たちが「これは神仙水だ! 定価2万5000円だけどまとめ買いしてくれれば1万円、安いぞ!」などと言いながら、おそらく使ったこともない高級化粧水や口紅を売ったり買ったりしているのが今の華強北ということになる。いや、正確に言えばそれも1月初旬までの華強北の姿でしかない。2年ほど続いた「コスメの街」としての華強北は、ある日あっけなく幕切れを迎えた。

 貿易の拠点から電気街、そしてコスメの街へ。今回は目まぐるしく変わり続ける深圳・華強北の歴史を振り返りながら、その背景にある深圳、ひいては現代中国のDNAについて考えてみたい。

 人口数万人程度の漁村が1980年に改革開放政策の一環として経済特区に指定され、たった40年で1300万都市まで成長したという歴史を持つ深圳は、ある意味で中国の「爆速」成長のシンボルとも言えるだろう。初期の深圳は香港に隣接するという地の利を生かし、中国の企業が国外から無償提供された原材料を加工して輸出する「来料加工」を中心とした貿易で発展した。そして拡大する中国国内のパソコンや携帯電話需要を吸収する形で電脳都市へと姿を変えていったというのが、おおざっぱに言えば最初の20年である。

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