「若い世代にアピールするために、個性の強い、アイコニックでシンプルなデザインを心掛けました」。新型の電気自動車(EV)をPRする動画で開発理念を語る日本人男性。この手の動画としてはよく見られるものだが、少し違うのは、この男性が所属するのが「長城汽車」という耳慣れない中国企業だということだ(実際の動画)。

 中国では、国産自主ブランドの拡大と成熟に伴い、経験豊かな他国の技術者を高額の報酬で引き抜くケースがここ最近急増している。この長城汽車も同様で、過去には中国本社勤務で年間報酬の上限5000万円での募集が日本の転職サイトに出て話題になった。また2015年には日本法人、長城日本技研を設立し、日本でも活発に人材を採用してきた。冒頭の動画に登場する男性も、その1人だ。

 長城汽車という企業を知らない方も多いかもしれないが、2020年の売り上げが1000億元(約1.8兆円)を超える、れっきとした大手企業だ。21年11月までの新車販売台数は既に110万台を突破(うちSUVブランド「HAVAL」が半数近くを占める)。トヨタ自動車や日産自動車、独フォルクスワーゲンなどと組んでいる国有系メーカーを押しのけ、民間企業でありながら国内の自動車グループ4位に食い込む。

(出典:中国汽車協会)
(出典:中国汽車協会)
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 中国は年間3000万台近い新車が売れる世界最大の自動車市場だ。市場として大きいだけでなく、国産勢も製造の力をつけてきており、中でも比亜迪(BYD)や上海蔚来汽車(NIO、蔚来=ウェイライ)、理想汽車(リ・オート)といった新エネルギー車メーカーには勢いがある。21年佐川急便が配送用の新小型EVの生産を中国の五菱汽車に委託することを発表して話題になったように、一部メーカーは成熟した海外市場でも十分に戦える実力を既に備えている。一昔前であれば安かろう悪かろうの代名詞だった「メードインチャイナ」の品質と評価は、自動車業界においても変わってきていることは間違いない。そうした成長の裏側には、こうしたお雇い外国人たちの貢献もあるのだろう。

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 しかし今、そうした時代の流れに逆行するような事件が中国で起きている。問題となったのは長城汽車のブランド「欧拉(ORA)」シリーズ。日本では軽自動車にあたる小型のEV車を専門に、これまで「白猫」「黒猫」「好猫」などの車種を発表してきた。

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