もちろん、高齢者に優しいだけの施策は打たない。むしろ逆。市としては、公共施設の総面積を今後5~6年で30%削減する目標を掲げている。
そして今年初め、高齢者をはじめこれまで各種インフラを使ってきた人、これから使うであろう人、その双方を交えて話し合う新たな場を設けた。「何を削るべきか」「何がいらないか」をあぶりだす舞台装置だ。

今後、激しい衝突が起こるかもしれない。それでも住民自ら「削るインフラ」を決めてもらう、それこそ「派手さは欠いても地に足着いた政策」と言えるだろう。道路ができれば、公民館ができれば、我が街は潤う。少なくともそんなかつての地方活性化の発想とは決別した。
良いときに悪いことを考えなかったツケ
「今、儲(もう)けている間に次代の種を考えよ」「リスクが小さいときにこそ危機への備えを」。これらは、いくつもの危機を経験した日本企業の経営者の多くが、日々胸に刻む構えである。
何分、受け身になりやすい日本の地方自治体の場合、現実や近い将来の直視を避け、現状に甘んじたり、今のまま良い状態が続くと考えたりしがちだった。だから目の前で、「地方が壊れていく現実」に直面した際、「良いときにこそ悪いときのことも考える作業」をしてこなかったツケが一気に回ってくる。たじろぎ、うろたえ、嘆く。それでは前には進めない。
豊田、舞鶴、新城の3市に共通して見えたのは「我が街の成長の限界をも覚悟し、布石を打つ姿」だろう。いずれにせよ目下、危機なのだ。打てるべき手を打たないでいる。そんな時間的な猶予などもはや、ない。
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