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 日本最高積雪地点、7.85メートル――。長野県栄村に足を運ぶとこんな標柱が出迎えてくれる。1945年の日本記録とされ、今もこの村には毎年冬が来れば2~3メートルの雪が積もる。村の真ん中を千曲川が流れ、その深く大きな谷筋に31の集落が点在する。

長野県栄村は日本有数の豪雪地帯に位置する

 2000年代初頭、この栄村を有名にした理由はいくつかある。

 1つは、全国津々浦々こぞってその波に乗ろうとした政府主導の「平成の市町村大合併」の流れに、栄村があらがったこと。もう1つは、考えもなしに国からの補助金を受け取るのをやめ、その代わりに住民に重機などを貸与。自前で公共事業を進めたことだ。自立的な街づくりへの「先駆け」と評され、取り入れる小規模自治体もあった。

 「結(ゆ)い」は、雪深く、集落が孤立しかねないこの村だからこそのコンセプト。福祉政策でもその理念に基づき、真夜中でも雪の中でもすぐに高齢者の元へ村民が駆け付けられる仕組みを整えた。過疎地では介護事業者の参入がなかなか見込めない。できるだけ村の中で多くの女性に介護の資格を取ってもららえるよう手助けした。今なお「げたばきヘルパー」と呼ばれる。

「結い」が「ほころび」へ変わる時

 時はコロナ禍だが、人口密度の低いこの村にはそれほど影響はない。

 しかし、この村を取り巻く事態はもっと深刻で根が深い。逆風の構成要素は、自然災害であり、人口減であり、高齢化。小さな自治体が生き残る術(すべ)を示してきた栄村だが、この3つの風速は確実に村の想定を上回り、強まっている。

 災害では、2011年の東日本大震災の翌日未明、栄村を震度6強の地震が襲った。これを機に若者や子育て世帯の流出に一気に拍車がかかり、村の人口は2000人を割り込んだ。高齢化率は5割をすでに超え、村民の2人に1人が65歳以上だ。

道路、用水路の維持管理や農作業などは、住民が集落単位で取り組んできた