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 家の中で見つかったのに、身元が分からない変死体──。桜島を一望できる鹿児島市の北東部、吉野町竜ヶ水地区で、こんなぞっとする話を聞いた。

(写真:PIXTA)

 警察が調べたところ、すでに白骨化していた遺体はホームレスのものとみられる。見つかった場所はあるじ不在の「空き家」。雨風をしのぐためにその家に入り込んでいたようだと推察された。

 話を聞かせてくれた近所の住民は「時期? いつだったかなあ、ずいぶん前だったような……」。つまり、ずいぶんと前から空き家のまま放置されてきたというわけか。

 地区内の別の空き家では今なお、ごみの不法投棄やシロアリの大量発生などの問題が指摘され、住民を悩ませ続けている。「空き家1つで住環境は著しく悪化する」。人口3万人余りのこの街の住民の話を聞く限り、決して大げさな表現ではない。

 竜ヶ水地区は鹿児島市の中心市街地からやや遠いという難点を抱え、過去に集中豪雨で崖崩れが起きたこともある。だから街を去った人が多くいる。

竜ヶ水地区は過去に崖崩れが起きたこともあり、街を去った人が多くいる

人口60万人弱の鹿児島市、空き家ワースト3

 結果、屋根や壁面が崩れたまま、草木が家の内にも茂った家屋の数々が残った。地区のそばには薩摩藩島津家の別邸「仙巌園」など、世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」関連の史跡がある。歴史あるそんな街でさえ、だ。

 国の調査によると、全国の空き家の数は846万戸(18年)。20年前に比べ約1.5倍に達する。自治体比較で最も多いのは約4万9000戸の東京都世田谷区で、以下、東京都大田区、鹿児島市、大阪府東大阪市、宇都宮市が続く。鹿児島市は約4万7000戸で、ワースト3位。世田谷、大田の人口数・世帯数を考えれば、鹿児島市(20年で59万4000人)が3位に入っていることが、いかに「異常事態」かが分かる。

 理由を地元の専門家に聞くと、こんな答えが返ってきた。