人口は2050年に90億人に達すると予測されている。そのとき、私たちは人間らしい食を満喫することができるのだろうか。大地や海の恵みは有限だ。食料を適切に行き渡らせることができないなら、持続可能な農業や牧畜、水産の取り組みを前に進めなければいけない。場所を選ばず食料をつくり、地産地消に持ち込めるかが人類を救う。

アトランティックサーモンの閉鎖循環式陸上養殖システムの施設イメージパース。三重県津市の工業団地に建設中で2023年に完成すれば年産1万トンの新鮮なサーモンを国内市場に供給できる
アトランティックサーモンの閉鎖循環式陸上養殖システムの施設イメージパース。三重県津市の工業団地に建設中で2023年に完成すれば年産1万トンの新鮮なサーモンを国内市場に供給できる

 サーモンは「山で取る」時代がくる──。荒唐無稽にも聞こえる話を実現すべく奮闘する企業がある。すしネタなどで日本でもなじみのアトランティックサーモンの陸上養殖を手掛けるピュアサーモングループ。シンガポールの投資ファンドが設立した同社の日本法人、ソウルオブジャパン(東京・渋谷)が今夏、三重県津市で陸上養殖システムの建設を始めた。

 建屋は6万7000㎡と東京ドームの1.5倍の広さで2023年に完成する予定。巨大な円筒状の水槽を36基設置し、その容積は合計で8万~10万㎥に達する。人工海水をバクテリアでろ過しながら循環させ、アトランティックサーモンを育てる。

 前職の日揮ホールディングスで海外プラント建設に携わった溝上宏シニアプロジェクトマネージャーが現場の指揮を執る。「商業スケールでの陸上養殖システムではアジア最大級」。完成すれば年間1万トンのサーモンを供給できる。

 ピュアサーモンは18年にポーランドのパイロットプラントで陸上養殖に成功した。日本と米国、フランスで養殖施設のプロジェクトが動いている。日本が建設で先行しており、19年には伊藤忠商事と日本国内の販売契約を結んだ。

 サーモンは人口増に伴う食糧危機に対抗する切り札の1つと食品業界ではかねて評されている。畜産は飼料として膨大な穀物を使い、家畜がメタンガスを排出する。魚類は環境負荷が小さく、人工肉や培養肉の技術と並んで期待が大きい。

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