「飲食物の浪費は衝撃的で心が痛む」。8月中旬、中国の共産党機関紙「人民日報」は連日、習近平国家主席の言葉を大々的に伝えた。

習近平国家主席の指示を受け、飲食店は食べ残しをしないよう呼びかけ始めた(写真:アフロ)
習近平国家主席の指示を受け、飲食店は食べ残しをしないよう呼びかけ始めた(写真:アフロ)

 食べ切れないほど料理を出すのがもてなしだという古来の習慣に逆行する「食べ残すな」という指令。「浪費は恥、節約は栄誉だという雰囲気をつくれ」。一党独裁国家は号令一下で突如動き出した。飲食店は客に食べ切れる量の注文を呼びかけ、全国人民代表大会(日本の国会に相当)は飲食の浪費を抑える法律の制定を急ぐ。

 米国を向こうに回して対峙する超大国の最高指導者が食べ方にまで言及する姿は異様にも映る。確かに今夏、中国に異変が生じていたのは間違いない。7月に農耕地が広がる長江流域で大洪水が発生している。豚熱による豚肉価格の高騰が続き、南部の雲南省ではラオスからバッタも襲来していた。

 これらが今すぐ中国の食卓に甚大な影響を及ぼすわけではないが、14億人の胃袋をいずれ支えられなくなる事態を指導部は憂慮している。米中摩擦も背景のようだ。遠藤誉・中国問題グローバル研究所所長は習氏の発言について「貿易戦争の中で食糧が弱点にならないように補強しておこうとしている」とみる。

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