デジタル経済と社会主義は相性がよい

 データが技術革新の核であるのならば、ビッグデータは多くの事業者が利用可能な「公共財」と捉えるべきです。官民でさまざまな情報を持ち寄るなど、データの開放や流通が促進されれば、より便利なサービスが生み出される競争が生まれます。電力や通信のように、インフラに新規事業者がアクセスできるようにするのと同じ考え方を適用するのがよいのではないでしょうか。

なかなか壮大な計画ですね。

杉本氏:データの規格や分類の仕方、個人情報をどう排除していくかといった点で検討しなければならない課題は多いとは思いますが、きちんと作れば立派な国のデータ戦略になります。官民含めて知恵を出し合う必要があるでしょう。個人的には、分野ごとに皆がアクセスできるデータベースのようなものを作っていけばよいのではと思います。

 実際にEU(欧州連合)では今年2月から、欧州委員会がEU域内の自治体や企業から集めたデータを共有する枠組みを構築し、新たな技術革新につなげる「データの単一市場」を創設しようと動き出しています。データは「製造業」「モビリティー」「ヘルスケア」など、いくつかの分野ごとに分類されるようです。日本にも同様の動きが起こることを期待したいですね。

特定の企業によるデータ利活用を阻止することは、競争促進の観点から重要であることは理解できます。しかし産業政策上、データビジネスで先行する中国に対抗する意味においては非効率になりませんか。

杉本氏:皮肉なことにデジタル経済というものは、社会主義と非常に相性がよいのです。中国の場合、アリババやテンセントといった民間企業と国家が一体になっていますから、個人を含むすべての情報を利用し、さまざまなビジネスやイノベーションにつなげることができます。データ収集もリアルタイムで自由にできることから、国家の現状を把握することも容易です。計画に沿った経済発展を進める上で、デジタル技術は中国にとって非常に有力なツールなのです。

 一方で自由や平等、公正といった価値観を重視する西欧諸国は、データの利活用においてもこうした価値観を重視します。人権の観点から、個人情報に配慮した運用も求められます。情報へのアクセスに対してコストが発生するため、非効率ですがこれはもう価値観の違いとしか言いようがありません。

 産業政策上、多少非効率だとしても、多様なプレーヤーによる競争が成長や革新の源泉であるという考え方を守るために、規制当局はデジタル時代のルール作りへの積極的な関与が求められると思います。