デジタル時代においても、独占禁止法を積極的に運用することで、寡占や独占を取り締まることはできる、ということですね。

杉本氏:そうです。他にも日本では、個人情報を提供する消費者とプラットフォーマーの間でも情報の取引が発生していると考え、これまで企業間取引にしか適用してこなかった独占禁止法の優越的地位の乱用を当てはめる見解を示しました。消費者に対して優越的地位にあるプラットフォーマーが消費者の利益に反して不当にデータを収集したり、データの囲い込みをしたりした場合には独占禁止法上問題があると指摘したのです。

 こうした考え方をするに至った背景には、「両面市場」と呼ばれるプラットフォームビジネスならではの市場構造が関係しています。例えば検索サービスやSNSを例にして考えると、消費者は無料でサービスを利用できますが、片やプラットフォーマーはサービス提供を通して得た個人からの情報を活用して広告ビジネスを展開しています。無料が前提となっていますが、個人とプラットフォーマーの間には情報を介した取引関係が存在しています。

企業と個人の間に「優越的地位の乱用」を適用

 プラットフォーマーという市場において強い力を持つ企業が個人や取引先に不公正な行為を押し付けていることをどのように取り締まるかを考える上で、優越的地位の乱用は非常に有効なツールになると私は考えています。もともとは、大企業の下請け企業に対する不当な行為を取り締まる上で使われる考え方でしたが、デジタル時代の独占や寡占を考えるに当たり、国際標準にしてもよいのではと思っています。「優越的地位」という考え方をあまりしてこなかった欧州も最近ではこのスキームに注目し始めています。

サービスの質をめぐる競争が阻害されているとは、具体的にはどのような状態を指すのでしょうか。

杉本氏:例えば、現在グーグルやヤフーが提供している検索サービスは、個人の情報を活用したターゲット広告の販売を収益源にすることで成り立っています。ですが、消費者の中にはターゲット広告を受け取りたくないと思う人がいるのも事実です。本当は嫌だけど、サービスの選択肢がないから仕方ないと考える人もいるでしょう。

 ここでもし、ターゲット広告を収益源にしない検索サービスを提供する事業者が現れたとしたら、消費者は喜びます。消費者にとってより質の高いサービスが提供されたと考えることができるからです。ですが、既存のプラットフォーマーがこのようなサービスが生まれないよう、データを囲い込んだり利用の制限につながる行為をしてきたりしたら、質を高めることにつながる競争は起きません。

 今年の10月、インターネット検索事業における反競争的行為を理由に米司法省がグーグルを提訴しましたが、基本的に同じロジックなのではないかと考えています。自社の検索アプリを標準搭載するよう求めたり、他社の検索アプリをスマートフォンに初期搭載するのを禁じたりすることは、他社がデータ収集しようとする行為を阻害していることにつながります。サービスの質を高め合う競争を阻害する行為が、消費者の不利益につながると捉えたわけです。

米司法省とグーグルの争いは今後どうなると思いますか。規模拡大がもたらす弊害から事業を分割すべしとの意見も出ています。

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