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半導体をめぐる米中の対立の余波を分析する本連載。第3回「中国半導体戦略の本丸、『紫光集団』とは何者か」では、清華大学系の紫光集団が中国政府と歩調を合わせるように半導体の国産化に取り組む様子をまとめた。その紫光集団の高級副総裁に就いたのが、元エルピーダメモリの坂本幸雄氏。DRAMでの再起にかける坂本氏の執念は実るのか。

 JR川崎駅から徒歩5分の場所にあるオフィスビルの一角。一歩足を踏み入れると、真新しい机がズラリと並ぶ光景が広がる。幾つかの座席では、従業員がパソコンのモニターに向かって作業に集中していた。

紫光集団で高級副総裁を務める坂本幸雄氏(写真:北山宏一)

 ここは、中国半導体大手である紫光集団の日本法人オフィス。数年後の量産化を目指すDRAMの設計拠点と位置付けられている。一見するとオフィス開設が順調に進んでいるようだが、日本法人のトップで紫光集団本体の高級副総裁を務める坂本幸雄氏の表情は厳しい。

 坂本氏は開口一番こう明かした。「当初の計画から、少なくとも半年は遅れている」

 メモリー半導体を中心に手掛ける紫光集団では、フラッシュメモリーの開発が先行している。傘下の長江存儲科技(長江メモリー・テクノロジーズ、YMTC)が4月、世界最先端となる128層の3次元メモリーの開発に成功したと発表した。発表内容だけを見れば、韓国サムスン電子やキオクシア(旧東芝メモリ)のライバルとして台頭しつつあると言える。

 次なるターゲットとして開発を急ぐのがDRAMだ。中国重慶市での量産化に向け、2019年11月に坂本氏を経営幹部として招へいした。坂本氏は02年からNECと日立製作所、三菱電機のDRAM事業が統合されたエルピーダメモリ(現マイクロンメモリジャパン)の経営トップを務めた人物。紫光集団入りした坂本氏はDRAMの開発組織を日本で立ち上げ、重慶市の工場での量産につなげようとしている。

 坂本氏は19年末時点では、「遅くとも5年以内、早ければ3年での量産を目指す」としていた。計画達成に向けて、20年春までに70~100人規模の開発メンバーを採用し、DRAMの顧客である中国企業の求めるDRAMの回路設計に取り掛かっているはずだった(19年11月のインタビュー記事:「負け犬で終われない」元エルピーダ坂本社長が中国で再起)。それが「少なくとも半年遅れ」という状況に至ったのはなぜか。