米国がなりふり構わずに中国による先端半導体の製造や利用を止めようとしている。その強硬ぶりはかつての日本の半導体産業の競争力をそいだ貿易摩擦のとき以上だ。その混乱に半導体産業の構造的な変化も重なり、企業間の競争も激化している。半導体産業の将来を占う本連載の第1回は、米中のはざまで揺れる半導体関連企業の今を報告する。

中国の成長シナリオに乗るべきか、米国の「兵糧攻め」に従うべきか──。半導体の製造装置や材料を手掛ける国内メーカーが選択を迫られている。
「中国政府は半導体業界をバックアップする体制で設備投資意欲は旺盛。国内経済もまだまだ伸びるだろう。中国の半導体メーカーからは納入をせかされている状態だ」。中国で事業展開する日系半導体装置メーカーの幹部はこう語り、強気の姿勢を崩さない。
製造業の競争力強化を狙った「中国製造2025」を掲げ、半導体の国産化に突き進んできた中国。半導体製造装置の地域別市場規模では、中国市場は20年に173億ドル(約1兆8200億円)まで拡大し、世界市場の27.4%を占めるトップに躍り出ると予想されている。
その中国の半導体産業に「兵糧攻め」を繰り出したのが米国だ。中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対する半導体輸出規制が9月15日に発効。米国や韓国、台湾、日本などの半導体メーカーはファーウェイとその関連企業に先端半導体を輸出できなくなった。
中国のファウンドリー大手も輸出規制対象に
米国は攻撃の手を緩めない。台湾積体電路製造(TSMC)などに先端半導体の製造を委託できなくなったファーウェイが代わりに中国の企業に任せる道もふさごうと動いた。中国の半導体受託製造(ファウンドリー)大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)は10月4日、装置や材料の一部が米商務省の輸出規制の対象になっていると発表した。過去には半導体メモリーの1種であるDRAM開発を進めていた福建省晋華集成電路(JHICC)を米商務省が輸出規制対象の企業一覧「エンティティー・リスト」に入れ、JHICCの量産計画を頓挫させたこともある。
中国企業は輸入が難しくなるのを前に、半導体や装置、材料を前倒しで調達。半導体や関連製品のメーカーは駆け込み需要で活況にわいた。その繁忙ぶりの一方で、各社の口は一様に重い。「各国の法規制を順守するとしか言えません」。国内の半導体製造装置メーカーの担当者は絞り出すように話す。「輸出規制が影響するかどうかも言えないんです」。未来の展望を描けず、こうした返答に終始するメーカーがほとんどだ。
匿名で取材に応じた製造装置メーカー幹部は「シリコンウエハー上に回路を形成する『前工程』の製造装置は米国由来の技術も多く含まれる。厳格な輸出管理が不可欠だ」と指摘する。「米中対立のさなかに目立つのは避けたい」。そんな思惑が各社の口の重さから透けてみえる。
Powered by リゾーム?