新型コロナウイルスが確認されてから約1年がたつ。中国を震源地としたこの疫病は瞬く間に世界に広がり、各国の社会や経済を混乱に陥れた。多くの国が今なお終わらぬコロナ禍に苦しむ中、いち早く感染拡大を抑え込んだ中国は今や経済大国の中で「一人勝ち」といえる状況を築きつつある。世界の中で経済的影響力を増しており、それをテコに政治的主張を押し通そうとする姿勢も目に付くようになってきた。

 2021年は中国を支配する中国共産党の結党100周年に当たり、14次5カ年計画が始動する年でもある。習近平指導部は中国国内においては民間企業の引き締めに走っており、外交においても「戦狼外交」と呼ばれる強硬路線を鮮明にしている。

 日本は、これから中国とどう向き合っていくべきなのだろうか。それを考えるには、中国経済の現場で何が起きているのかを知ることが欠かせない。連載「一強中国の死角」では、現地取材を通じて中国の現実を明らかにしていく。

 「このままでは仕事にならない。どの工場も発電機を購入して操業を続けようとしている」

 中国浙江省義烏市の工場関係者はこう打ち明ける。世界最大の日用雑貨卸売市場がある義烏近郊には、加工工場が集積している。

 今冬に入り、浙江省や湖南省、江西省で計画停電が相次いでいる。浙江省では官公庁の一部で気温が3度を下回った場合のみ暖房利用を認められるようになり、工場にも稼働制限が指示された。ネット上には真っ暗になった工場の様子などを記録した動画が拡散している。

 現地メディアは、出稼ぎ労働者が故郷へ帰ってしまい5日に1日しか生産ラインが動かせなくなった工場もあると報じた。出稼ぎ労働者は働いた日数に応じて給与を受け取ることが多い。春節(旧正月、21年は2月12日)の連休前後は交通チケットがとりにくくなるため、どうせ稼げないならばと故郷に帰る予定を前倒ししてしまったのだという。

 特に状況が厳しいのは湖南省だ。国有送電企業の国家電網は「戦時状態」にあると宣言し、企業にはピークシフトが呼びかけられた。基本的に電力供給制限は住民の生活影響への配慮から工場など企業向けに実施されるが、同省長沙市では複数回にわたり居住区を含む地域が停電の対象となっている。

 国家発展改革委員会(発改委)の趙辰昕秘書長は20年12月21日、「電力供給は安定しており、市民生活における電力利用は影響を受けていない」と安心するよう呼びかけた。だが、そうした呼びかけ自体が各地に不安が広がっていることの裏返しだ。上海市でも供給力不足で停電があるとの噂が流れ、中国共産党機関紙の人民日報が「メンテナンスのための計画停電だ」と伝えた。広東省の深圳市では当局が「現在は需給のバランスがとれており供給制限は実施しない」と企業に説明している。

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この記事はシリーズ「広岡延隆の「中国ニューノーマル最前線」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。