北海道の名門中高一貫校に入学した少年が学校運営資金を稼ぐ「投資部」に入り、投資を通じて社会と関わり合いを学んでいくマンガ「インベスターZ」。ユニークな設定やストーリーの面白さもさることながら、投資を通じて様々な企業のビジネスモデルや社会の仕組みを学べる内容が相まって大ヒットし、テレビドラマにもなった。

 その「インベスターZ」が10月1日、中国進出を果たした。中国版のタイトルは「大赢家―新投資者Z」。「赢」は現在の日本ではほぼ使われないが「勝つ」という意味の文字だ。日本流のタイトルにすれば「ザ・ビッグ・ウィナー」といったところだろう。

中国で配信が始まった「大赢家―新投資者Z」の第1話 ©Gen Z Group Pte. Ltd.
中国で配信が始まった「大赢家―新投資者Z」の第1話 ©Gen Z Group Pte. Ltd.
原作同様、麻雀(マージャン)シーンも登場。中国の麻雀牌は日本よりも大きい ©Gen Z Group Pte. Ltd.
原作同様、麻雀(マージャン)シーンも登場。中国の麻雀牌は日本よりも大きい ©Gen Z Group Pte. Ltd.

 現在の中国のマンガ市場における主戦場は、スマートフォン向け配信だ。日本では見開きの雑誌や単行本を前提にしたコマ割りのマンガが主流だが、中国においてはスマートフォン上でストレスなく読める形式でなければ読者に受け入れられない。

 そこで中国の人気マンガ家、転輪手槍(リボルバー)氏がウェブトゥーンというスマホに特化した縦スクロールで読めるフルカラーのデジタルコミックにリメークした。「快看漫画」「騰訊動漫」「微博動漫」など複数の中国向けマンガ配信プラットフォームで連日配信している。

 インベスターZの作者の三田紀房氏は、リボルバー氏とのミーティングにおいて「キャラクターや設定も変えてかまわない。中国の事情に合わせてリボルバー氏が描きたいように描いてほしい」と助言している。その言葉の通り、舞台設定も中国経済の今を大きく反映したものになった。

 中学1年生だった主人公は、中国版では貧乏な大学生だ。中国では中学生や高校生は「高考」と呼ばれる全国共通大学入試で高得点を取ることを目標にして猛勉強に日夜励んでおり、日本ほど放課後のクラブ活動が活発でない。また、現実には未成年による株式取引口座の開設も認められていない。複数人の仲間が集まりある程度の時間を使って投資活動を行うなら、大学生という設定が自然だ。

 主人公は学業の傍ら、フード宅配のアルバイトをしている。こうした配達員は今、中国の街中を歩いていて最も目に付く存在であり読者にとってもなじみ深い。主人公が最初に株を買うのも、このアルバイト先の企業だ。投資が決して日常生活から縁遠いモノではないことが、自然に理解できるようになっている。

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